今週の『らんまん』のテーマは「シロツメグサ」です。みんなが摘んだことのある身近な草です。蓮華とシロツメグサで作った花輪は、楽しかった幼い頃を呼び起こしてくれます。
近頃、この白い花が広々とした場所に咲いているのを見かけなくなって、さびしいことです。もう、花のなかに腰を下ろすこともないのでしょうか。
さて、今日のお題は「セントウソウ(仙洞草)」でした。日本固有種といいますから、牧野博士の命名でしょうが、その意味は不明だとか。
この花を別名「オウレンダマシ」というのは、黄蓮と同じく春先に薄暗い林の中に咲くから、気をつけないと春の妖精に騙されるよという意味合いでしょうか。
いずれにしても、植物の個性を鑑定しながら歩き回った博士の植物愛が感じられます。
「オウレン」は、正倉院薬物にすでに見られる薬草です。
正倉院の収蔵品は、正確には、「黒黄連(胡黄蓮)」です。今から1200年の昔、ヒマラヤの海抜3500m以上の場所に生えていた植物です、といわれても、そうなんだと、軽く受け流すわけにはまいりません。
高い雪山に分け入って、まず見つけることが至難で、そこから、海を渡って日本に送られてくるまでに紛失したり腐ったり。
保存法も輸送手段も限られていたことを思うだけで、その長旅にロマンを感じます。
ちなみに、「黒黄蓮」が貴重だったから、民間薬「センブリ」が開発されたといわれています。
胃痛が現代人だけのものではなく、古代の人も悩まされていたということです。
つまり、悩み事はいつの時代も変わらずにあるということが、正倉院御物から推測されるとは興味深いことです。
その「黒黄連」を求めて、天山山脈に赴き、すっかり虜になったお話を集めた本が『天山山脈薬草紀行』(難波恒雄・池上正治著)です。
この帯にある「シルクロード」という言葉。
昔、NHK『シルクロード』を見てたころは子どもでしたから、喜多郎さんのテーマ音楽だけを聴いていた気がします。
もういちど観たくて探したら、ありがたいことに、YouTubeで配信されていました。
今更ながら、いい番組です。石坂浩二さんのナレーションが、落ち着いた雰囲気作りに一役かっています。
アジアの屋根と呼ばれる天山山脈を囲む草原に住む人々の多くは、今、話題になっているウイグル人です。
こんなところに生活している人たちだっんたんですね。
彼らの多くがイスラム教徒であることも、遊牧生活をしている民であることも、初めて知りました。
本の方は、「雪蓮花」という美しい名前に惹かれて、この花の写真が出てくるページをまず繰ってしまいました。
3500m~5000mの雪山の中で、咲くこと自体に生命力を感じないではおれません。
果たして、滋養強壮の効能は朝鮮人参をはるかに超えるとか。たっぷりした花の持ついのちが、見た目通りに豊かであることに、研究者でなくとも魅せられることです。
しばらくは、天山山脈のビデオを観ながら、かの地に思いを馳せたいと思っています。
そうそう、砂漠の中のオアシスで山のように積んで売っているのが「ハミウリ」です。
甘くて水分たっぷりのスイカの原種です。
今日みたいに暑い日には、おやつにぴったりの西瓜(西域の瓜)です。