こころあそびの記

日常に小さな感動を

そうだ、奈良へ行こう!

 

 昨日のツアー話の続きです。

 バスガイドさんが添乗するツアーと確認もせず申し込んだのですが、実際には、同乗してくださったことで多くを学ぶことができました。

 バスが走っている間、お客様に一つでも有用な情報を届けたいという気持ちがあふれているように思えるガイドさんでした。

 

 

 実は、この浄瑠璃寺行きの定期観光バスはもうすぐ終了するそうです。そのわけは、ガイドの数は足りていても、2024年問題でご存知の通りドライバーが不足しているためだとか。観光バス業界の裏事情を垣間見た思いがしました。

 ふつうなら、そこで終わる話が、「もし、また訪れてくださる際には、JR加茂駅発着のコミュニティーバスなら一時間に一本ですが400円で運行しています。上手に利用してみて下さい」というライバルバスの宣伝には、奈良にきてほしい!との思いが込められていました。

 「JRのキャンペーン『そうだ、京都へ行こう』のあとに一言、『そのあと奈良に』とつけ加えてくれたらよかったのに」という彼女の切実な言葉には、奈良観光への熱い思いが伝わってきたことです。

 大丈夫。私は、着いた途端に感じる広々した奈良の開放感が好きですよとガイドさんに伝えたくなりました。

 

 

 午前中ツアーの終点間近になって、一枚の写真か掲げられました。

 「これは、現在春季特別開扉中の『法隆寺、夢殿本尊の観音菩薩立像(救世観音)』です。18日までですので、機会がありましたらお訪ね下さい」

 これは、これは。もう来週では間に合わない。今日行くしかない、とあたふたと奈良駅でバスを下ろしてもらって、法隆寺に向かったことは言うまでもありません。

 親切なガイドさんのおかげで、私たちの旅は更にランクアップ。

 

 

 法隆寺駅から、コミュニティーバスに乗り込み着いたお寺は、修学旅行生以外の拝観者はチラホラという絶好のおまいり日和でした。

 貴重な文化財の数々が、1400年も前からそこにあったことに感動。その上、どれもこれも教科書に載っていたものばかりです。

 知識がないので、もちろん仏像の価値など分かるはずもありませんのに、教科書で見たことあるというだけでいやでもテンションが上がります。

 例のガイドさんが、雨の今日だから美しく拝観できると教えてくれた夢殿の救世観音。

 晴れの日は外光が強すぎて、せっかくのLED照明の効果が台無しになるそうです。雨のありがたさを新ためて知ったことでした。

 

 

 さて、法隆寺を堪能したあと、帰るつもりでしたのに、「中宮寺」の掲示板が目に入ったので、寄って行くことにしました。

 ここには、大好きが2つあります。

 一つは、みんな大好きな本尊「如意輪観世音菩薩(国宝 木造菩薩半跏像)」が納められた本堂の修復には、高松宮宣仁親王妃殿下喜久子様のご尽力があったと説明がありました。菊のご紋の尼寺です。

 

 

 二つ目は、会津八一の歌碑です。

 歌が刻まれた石面に雨が滴り落ちて、今日だから見られた模様を美しく思いました。

 

 「みほとけのあごとひじとにあまで   

 らの あさのひかりのともしきろか

 も 中宮寺にて 秋艸道人 」

 

 

 それから、中宮寺に入って直ぐのところに昭和天皇妃、香淳皇后のお歌が刻まれていました。読みあぐねていると、通りかかったお寺の方が読んで下さいました。

 

 「中宮寺の都い地のうちにしずもりて さざんかの花清らかに咲く」

 

 私たちの年齢の者が国母と仰いだ皇后さまでした。

 

 すべて、昨日一日のこと。

 どなたかに運んでいただいたとしか思えない名残惜しい旅でした。