こころあそびの記

日常に小さな感動を

K2

 

 その情報は、二、三日前にもたらされました。

 それからというもの、見なかったことにしようと自分の気持ちを押さえ込んできましたが、昨晩あたりから、SNS上に悲しい情報が溢れはじめましたので、観念するしかないのでしょうか。

 いつものように、青空に浮かぶ白い雲を見ても心が晴れません。

 

 

 すでにご存知のことと存じますが、アルペンクライマーであり山岳カメラマンでもある中島健郎さんが遭難されました。

 世界で二番目に高い山であるK2(8611m)に、先輩の平出和也さんと一緒に登頂中のところ、7000m付近から滑落したのが三日ほど前。

 それから、たった三日で、もう捜索の打ち切りが報じられました。

 嘘でしょう。そんなに簡単に諦めるんですか。

 岩と氷の世界である未踏のルートに捜索隊は出せないこと。ヘリコプターで上空から見たところ、お二人に動く気配がないこと。

 そんな手の届かない情報を、ご家族に伝え、同意の下、救助活動は継続が困難という決断に至ったそうです。

 

 

 ついこないだまで、朝のBSで、『虎と翼』のあと、中島健郎さんの「黒部大滝」への挑戦が放映されていました。

 あの優しい冒険家のお顔を、直に拝見できないままになってしまったことは、残念でなりません。かねがね、来世で出会いたい男性は中島さんと決めていただけにショックです。

 

 『イッテQ!』は観ない番組なのですが、番組の企画で、一緒にヒマラヤ登山したイモトアヤコさんもコメントを出しておられます。

 優しくて、温かくて、しかも勇気のある人と。

 ところで、一説によると、冒険家は43歳の壁なるものがあるそうです。

 植村直己さんがアラスカで消息を絶ったのも、星野道夫さんがアラスカで熊に襲われたのも43歳だったとか。

 でも、中島さんはまだ39歳なんです!まだ4年も残されているではありませんか。

 地球上で最も天に近いヒマラヤの神々様。どうか、中島健郎さんを逝かせないで下さい。

 登山なんて、夢のまた夢である者にとって、中島さんの挑戦される映像が楽しみでした。とてつもない危険なことをされているのに、優しい口調と笑顔が山を神々しく見せてくれました。そんなファンがいっぱいです。皆、口々に「帰ってこい!」と、一縷の望みを捨てきれないで待っています。

 

 冒険家とは、それを目指した日から、覚悟がいります。そして、当人だけでなくご家族も、それ以上の覚悟が必要であるとお察ししています。

 中島さんの魂が、雪と氷と澄み切った天をプレゼントにして、奥様とお子様のもとに無事に帰ってきてくださいますように。

 私は、しつこく待つつもりです。願わくば奇跡が起こりますように。