昼間のアブラ蝉の声が落ち着いて、夜のカネタタキの声が涼やかに聞こえるようになりました。
日中の暑さも翳りを感じるようになった今の季節、夜明けが遅くなってきたことをご存知でしょうか。
4時の空は、西に隠れる蠍に見つからないように、東からオリオンがそっと顔を出しているところです。
そんなことに気づいたのも今朝のこと。
家人のいない自由な一日を過ごしました。
散歩をしても、買い物に行っても、時が進まないのです。あれ?まだ午前中なの?と時間を持て余してしまいました。
時間とは不思議なものです。
たとえば、大仕事を終えたあとの時間はゆっくり巡りますし、仕事が立て込むときは、時計と睨めっこ状態に陥ります。
つまりは、心の余裕と時は深い関係にあるのでしょうか。
そんなことを考えてしまう一日でした。
図書館で、『空海の風景』を返却して、後ろにあった棚を眺めていたら、『すてきなあなたに』(暮らしの手帖社)の装丁がかわいくて、つい手に取ってしまいました。
見覚えのある題名は「暮らしの手帖」を編集されていた花森安治の言葉です。
本の大きさと、デザインが気に入りました。
というのは、拙著を作ろうとしたとき、編集者から一番はじめに訊かれたことが、「どんな本が作りたいか」だったので、面食らってしまった経験があるからです。
本を作るとは、文章を書くだけではすまないことを知りました。
なんでもいいから、一生に一冊というほかには、何も考えていない暴走ぶりが、私らしいといえばそうなんですが・・
本を作るにあたっては、まずイメージしないといけないことを学ぶところからのスタートでした。
この本は、大橋鎭子さんが四十九歳から四十三年間書き綴ったベスト版です。
中身は、1月から12月までの章立てになっていて、どこを開いても、ほっとできるエッセイばかりが集められています。
いいなぁ、こんな本。
プロの文章を読みながら、なぜか得体のしれない勇気が湧いてくる本でした。