こころあそびの記

日常に小さな感動を

薬草園

 

 次の日に大切な用事があれば、ふつうはその準備に時間を費やすものではないでしょうか。

 ところが、じっとそのことだけ考えて過ごすことができず、動き回ってしまうのが、私の性のようです。意気地なしだから、緊張から逃げ出したい一心なのでしょう。

 人間は、頭で計画的に動くより、気持ちで動いてしまう部分の方が大きいようです。

 

 

 ということで、頭の隅に置きっぱなしだった用事を思い出して、母校へ卒業証明書をもらいに行ってきました。

 何のために?

 それは、先年、府大をお辞めになった大形先生の関西大学での講座がこの後期をもって終了しますので、その聴講の出願書類に必要なためです。

 あんなに勉強嫌いだったのに、学校という雰囲気が好きな私です。学生という身分をお与え下さった恩人の最終講義ですから、聴講しないという選択はありません。

 

 

 建て替え工事が続く母校は、池を残して殆どの建物が新しくなっていました。

 せっかく来たのだから、薬草園に寄って帰ることにしようと思いついた自分にびっくりしました。

 此処に通った二十歳前後は、目的が持てず腑抜けた日々でした。もったいないことをしたと思う反面、その無駄な時間が私の何かを育くんでくれたと思ったりしています。

 励むこともなかった部活動。部室の裏の坂道を上ったところに、薬草園がありました。

 現役のときには、触手が全く動かなかった場所に嬉々として立っている自分が可笑しくて、年をとるのはいいことだと感慨を深くしたことでした。

 

 

 アシタバの花。

 

 

 クスリウコンの花はショウガ科だけに、美しいです。

 

 

 上の方に庭師の方がお一人、作業されていました。

 「こんにちは。こんなに広いところを一人で?精が出ますね」

 「いや、2人でやってます。お盆明けだから、ひどいことになっててごめんなさい」

 こんな得手勝手な訪問者に謝らないで下さい。じゅうぶんに楽しませていただきましたよ。

 それに、雲行きが怪しかった空が晴れて、遥かな海が見渡せたこともうれしかったです。

 こんな日は、どなたかが此処に連れてきて下さったと思えます。ありがたいことでした。