こころあそびの記

日常に小さな感動を

月亮

 

 昨晩、友人から「月の周りに虹が見えますよ」と知らせてもらったのに、すでに就寝という体たらくでした。

 その分、今朝の夜明け前に雲が懸かった有明の月に酔いました。

 風流人でなくとも、「人の心を写す鏡」と気取ってみたくなる美しいお月様でした。

 

 今夜は満月(十六夜)です。

 中国には「十五的月亮十六圓」という言葉があるそうです。

 十五夜は明るく見えるお月様、十六夜はまん丸お月様、という意味でしょうか。

 因みに、日本ではお月さまのことを「月亮」というそうです。ものを知らないことは恥ずかしいことながら、恥を忍べば、こうして誰かが教えて下さる。うれしいありがたいことです。

 

 

 きのうの夕方の散歩時にすれ違った親子の会話があまりにかわいらしくて、書き留めずにおれませんでした。

 いつもの坂道の途中で西の空を指差しているお母さんと幼子二人。

 「お母さん、あのコウモリの横で光ってるのは何?」

 「ええっ?UFOやないの?」と母。

 「でも、動かないよ」

 「わかった!あれはお星さま!一番星やわ」

 あれは金星、宵の明星と口を挟む気になりませんでした。あの夢の時間を壊したくないと、とっさに感じたからでした。

 お母さんと夕焼けを見たとき、僕が一番星を見つけたんだ。そんな幸せを抱いて大人になってほしい。大切な思い出になることでしょう。

 

 

 つまらない年寄りのこだわりをひとつ。

 子育てが終わって働き始めた薬局の社長から、まずこれだけはと申し渡されたのが、「患者さんが店に入ってきたら、『こんにちは』と挨拶すること」でした。

 それから何十年言い続けてきました。

 なのに、先日、孫のお薬をもらいに薬局に入った途端、「こんにちは」と全員から機械的な挨拶が飛んできたのには、面食らってしまいました。

 「ここはマクドナルドか」と思ったのです。

 お薬をもらう場所と、ハンバーガーを買う場所は、目的が異なります。

 「さぁ何を食べようか」という客を迎えるのは、サービス業。

 薬局もサービス業ではありますが、やって来る人の事情はそれぞれですから、一様に明るい挨拶を受け入れられる人ばかりではないはずです。

 

 これは、調剤薬局が、いわゆる町の薬局からスタートした当時の風習のままであることを思わせます。

 その頃は、一人薬局が多かったから、入ってきたお客さんと目を合わせて挨拶できたでしょう。

 今の薬局は、奥の調剤室で働く人もいます。その人たちが、自分の手元業務をこなしながら、声だけ合わせるのは、どうなんでしょう。

 それって、ファストフード店のマニュアルではないのかといらぬ心配をしてしまう日々です

 自分が患者さんと投薬台で向かい合った時、目を見て心を込めて挨拶したらだめなのかな?

 老婆のハテナ?です。