こころあそびの記

日常に小さな感動を

色あわせ

 

 夏の名残りが庭にあります。

 その強烈な色はまさに強烈な太陽を浴びた証しです。抜くにしのびなく、とは言い訳で、只今、家庭菜園は開店休業中です。

 

 

 秋咲きの準備を整えた金木犀

 

 

 来春の花芽を準備し終えて眠りにつこうとする桜の老木。

 

 

 さて、遅起きを決め込んで寝坊した朝。東から太陽が今まさに昇ろうとしている空を見上げましたら、一片の雲が桜色に染まって浮かんでいました。

 ほんとに小さな欠片でしたのに、明け始める空色とのコーディネーションに、はっとさせられました。

 この二つの色を組み合わせた人が思い出されたのです。

 

 それは、娘の振り袖を準備してやった時のことでした。

 

 話は脱線しますが、私の振り袖は母が知り合いの娘さんにとっくの昔に譲ってしまって、なくなっていました。

 信じられないことでしょうが、たった一人の女の孫でしたのに、その存在は母にとってはライバルでしかなかったようです。そんな子供っぽい母でしたが、老いてからは、娘を一番の話し相手にしたのもおかしなこと。二人の関係が改善されてあの世に旅立てたことは良かったことでした。

 

 

 和服の楽しみ方は多種多様ですが、色好きの私にとっては、まずは色あわせです。

 『光る君へ』で役者さんがお召しになっている色鮮やかな衣装の数々で目の保養をさせていただいています。

 平安時代には、すでに色使いのルールが男性の冠位だけでなく、女性の襲目(かさねめ)まで、できあがっていたことに驚くばかりです。元々、素養があった日本人の美意識は、長い時間をかけて熟成されてきたことが分かります。

 

 

 やっと本題です。

 桜色の着物にどんな色の小物をとりあわせるか。それも、和服の楽しみです。

 件の呉服屋の女将が選んだ帯揚げは、水色でした。側で見ていた店員さんが、「そうくると思った」とつぶやかれたのを忘れもしません。

 私は、あの女将の色選びのセンスが好きでした。それは、自然観察から身につけられたのでしょうか。いつか、お伺いしてみたいことです。