早朝に見上げた東の空には、北斗七星の柄の先にアークツゥルス、その先にスピカが見えて、春の大曲線が完成していることに驚きました。
うかうかしているうちに今日から師走。
あんなに賑やかだった冬の星たちが西の空に追いやられてしまった季節の移ろいに、一抹の寂しさを感じた朝でした。
今日は旧暦で十一月朔日、月が見えない日なんですが、現行暦も先月に続き今月も1日が新月と重なっています。
月のない夜空の星々の美しさに気づいた歌として有名なのが、建礼門院右京大夫のものです。
「月をこそ眺めなれしか星の夜の
深きあはれをこよひ知りぬる」
作者は安徳天皇の母である徳子中宮に仕えた女房です。平家の栄華と没落を徳子の側で見たことに、どれほどの悲しみがあったことか想像に難くありません。
彼女の星空描写の力量はは次のくだりに表れています。
「ことにはれて浅葱色なるに光ことごとしき星の大きなるがむらもなく出でたる、なのめならずおもしろく、縹の紙に箔をうちちらしたるさまに似たり」
あれだけ『光る君へ』で紙の美しさを見せてもらっているのに、星空をを料紙で称えるアイデアが浮かびませんでした。星といえばキラキラ。西洋文化に洗脳されていることを思い知らされたとともに、日本語の美しさを再認識した名文でした。
建礼門院といって思い出したのは、京都円山公園近くの長楽寺です。
二、三十年昔、訪ねたことがあって、そのとき建礼門院のお部屋で、一字写経をした記憶があります。
彼女は、このお寺で剃髪したと記録されています。我が子と共に壇ノ浦に沈んだはずが、源氏に救い出されてしまうなんて。
こんな体験を越えて生き続けた女性がいたことを知ったお寺でした。
今宵は「星月夜」です。
過日、「星を観ると人間が自然と一体であることを感じます」と話して下さった中途覚醒でお困りだった奥様。
丑二つ時に目覚めた折りには、是非星を見上げて下さい。
満天の星に悠久の時の流れを感じられる、その自分の心に感動できること請け合いです。