
「ちょっと”デフ“行ってくる」。
私が幼い頃、そう言って出かけて行く父の行き先は天神さんの裏門近くにあった本家でした。
父の両親は戦中に相次いで病没したため、頼りない長男であった父が分家代表だったのでしょう。
“デフ”という発音が、本当は天神さんの裏門近くにある「霊符社(れいふしゃ)」のことだったと知ったのは、父が亡くなる少し前のことでした。

今朝、孫の弁当を作りながら、NHKの『金と銀』を地上波の再放送で観ました。
BSで放送されてるとき、すでに直木賞候補作品『オルタネート』を読んでいた私は、加藤シゲアキさんに興味をもっていまして、その落ち着いた演技力に驚いたものです。
とても、歌って踊るジャニーズのメンバーとは思えませんでした。
また、ドラマの中で彼の嫁になる小芝風花さんとのバランスがよくて、きっちりとした時代劇にできあがっていました。
たまたま、今朝の1シーンで、天神さん(ではありませんでしたが・・)で、加藤旦那が小芝さんにプロポーズするシーンがあって、こういう時代劇を面白がるのも私たち世代で終わりかなとさびしく感じました。
原作者は高田郁さん。宝塚出身だそうです。
大阪弁と天神さんが生きるはずです。
このドラマで好演した小芝風花さんは、今回の大河ドラマに抜擢され、さらには、本屋の話も盛り込まれているなど、NHKに多大な貢献をした高田郁さんのお話作りに感心しているところです。

ところで、「方言の消滅」がニュースになっています。
ほんまですね。我が娘の話し言葉も、もはや大阪弁は欠片ほどしか混じらなくなっています。それは、他県の人と結婚したから、そちらの影響もあるでしょう。
私自身も、名古屋弁やら、讃岐弁やらごちゃ混ぜになっているはず。
でも、先日読んだ『母の待つ里』では、故郷に設定された東北のある町で待ってくれる母親の訛りが、どれほど都会人の心を癒やしたことか。
方言があるから、“帰ってきた”と落ちつかせることを、作家である浅田次郎さんはよくご存知で、訛り言葉が絶大な効果を生んでいました。

昨夜から降り続いた雨も上がり、どこの神社もひと安心されていることでしょう。
鬼が出没するのは、丑寅の時刻ですから、本当は真夜中です。そうもいかないから、多くは今日の午後から豆撒きされます。飛んでくる豆を取り合うときのお顔はみんな笑顔です。神様がが喜んで下さる行事です。
さて、私は父がビー玉遊びをしていた天神さんにでも行ってこようかな。裏門近くにある霊府社で、父が待ってるような気がするから。