こころあそびの記

日常に小さな感動を

前途洋々

 

 四天王寺さんの六時堂はただ今改修中です。

 それを受け持っておられるのが金剛組。昨日、通りかかったら、雨露に晒されてところどころ綻びている旗が立てられていました。

 書いてある仏の名前は私には読めませんでしたが、ふん?と二度見すると面白いことが分かりました。漢字のそれぞれの画が「ノコギリ」や、「トンカチ」で表現させているのです。

 その大工道具の中にさらに小さな字で釘などの漢字が書き込まれています。

 我ながら、この細かな細工を発見したことに感激した次第なのでご報告まで。さすが金剛組

 

 

 昨日の祝賀会の鏡開きは「十二年ものの紹興酒」でした。

 下戸の私には、猫に小判ですが、どんなお味だったのでしょう。

 私が指定された席は、大形先生の聴講生の先輩で御年84歳のSさんのお隣で、その他は若い教え子たちでした。

 目ざとく書道部員を見つけたので、尋ねてみました。

 「あの〜、阪神タイガースの文字を書いていた人を知りませんか?」と。

 学祭に行った時、あまりに美しい文字で応援の言葉が展示されていたので、娘と感心した覚えがあったからです。

 「それ、僕です」とあっさり尋ね人が見つかってハイ状態になってしまったのは、おばあさんのしるしです。

 「お習字どれくらい習ってたの?」

 「小学校から中学出るまで」

 「書体としてはどのくらい?」

 「行書くらいかな」

 そうなんだ。癖のないだれでも読める字をさらさらとお軸に書けるなんて、それも男の子が。

 筆使いは一朝一夕でなるものではありませんから、マスターするまで習っておいたことは、生涯の宝物になることでしょう。

 

 

 それから、

 「さっき、西明石と聞こえてきたけど、ひょっとしてJR?」

 単純に、新幹線の駅があるところだからです。

 「いえ、メーカーです」

 「ということは石川島播磨?」

 「いえ、K.Jです」

 若い人が社会で活躍している話は老人にとって最高の喜びですから、ワクワクが止まらず、私的なことまで踏み込んでしまいました。

 その後も、結婚しようと思うお相手がいることまでも、聞き出したりして、ハズレなお席に当たってしまったね。反省半分、興奮半分。

 

 

 楽しいお話を聞いているにもかかわらず、心の片隅に一抹のさびしさが浮かんできたのは、今春、合格できなかった孫がよぎったからです。

 目の前の前途洋々の男性と、それほど年の差はありませから、もう数年もすれば、彼のように世の中に漕ぎ出していくのですね。

 彼が羨ましいというのではなく、孫といよいよ別れる日が近づいていることを知ってしまったのです。

 あと、数年しか一緒におれないんだ。そういう現実を彼が教えてくれました。

 一日一日大切にというのは、期限のあるなしに関わらずとわかってはいますが、涯があるとわかっておれば、その時間はさらに愛しく思えます。