日本にいくつ交響楽団があるのかご存知ですか?
大阪には、故・朝比奈隆さんが率いられた大フィルをはじめ、存続の危機を乗り越えて意外に多くのプロ楽団があります。
しかし、その経営状態は厳しいものと聞きます。地方都市なら尚更のこと。偏に、楽団の存続は県民の皆様の民意の高さを表すものでありましょう。
山形交響楽団「さくらんぼコンサート」が本日、ザ・シンホォニーホールで開催されました。
久しぶりに、オーケストラの奏でる音に浸りました。
『モーツァルト、交響曲第38番ニ長調「プラハ」K.504』で始まった演奏を聴きながら、この演奏者達は、毎日、どんな景色の中で練習されているのかしらと想像しました。
さくらんぼ畑?田植えを終えたばかりの棚田?
山寺では今年も蝉が鳴き始めているのかな?
「閑けさや岩に染み入る蝉の声」。
数年前の真夏に上った立石寺から見下ろした山形の町を思い浮かべて聴かせていただきました。
二曲目です。いよいよ、登場されました。
今日の主役、舘野泉さんです。
今年85歳になられる”左手のピアニスト“です。
ピアノの側まで車椅子を押してもらって出てこられました。
『ブリテン、左手のピアノと管弦楽のための主題と変奏「ディヴァージョンズ」作品21』
これは、第一次世界大戦で右腕を失ったパウル・ヴィトゲンシュタインが多くの音楽家に左手だけで弾けるピアノ曲を委嘱したことで、出来た曲の中の一つだそうです。
右足でペダルを踏んでおられました。
左手はオーケストラに負けない力強さがありました。
お顔はどこまでも美しくて、拝顔できた喜びで胸がいっぱいになりました。
拍手は鳴り止まず、何回も何回も、舞台に帰ってきて下さいました。
アンコール曲は「カッチーニ作曲、アヴェマリア」でした。
涙が滲みました。どれだけの山を越えて越えてここまでこられたのでしょう。それとも、初めから磨き上げられた魂でお生まれになったのでしょうか。
席を立つとき、隣のお二人の会話が聞こえてきました。
「いい演奏会に誘ってくださってありがとうございます。心が洗われました」と。
舘野泉さんの清い魂が、参加者全員の心を清めてくださったと思いました。
舘野泉さんご本人に拍手が送れたことに感動しています。ありがとうございました。