こころあそびの記

日常に小さな感動を

そばにいるよ

 

 数日前、新聞の訃報欄で松長有慶さまが94歳でお亡くなりになったことを知りました。

 高野山真言宗の元・管長で、総本山金剛峰寺第412世座主でいらっしゃいました。

 ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 お名前を存じ上げていたのは、ご著書を一冊持っていたからです。

 本を読んでも、密教とその他の仏教の違いがわかるわけでもないのですが、空海という謎めいた方のことに興味を持っています。

 松長さんが遺された空海の足跡を丹念に調べた記録は、後を歩く修行僧だけでなく、一般人にも役立つものと考えます。

 

 旅装束の空海の像は、いたるところで見かけます。

 ええっ。こんな所まで本当に歩いてこられたのかと、その脚力に感心してしまいます。

 

 『大宇宙に生きる』によりますと、弘法大師の求めたところは、大変深い真理の世界です。

 他宗教は、往生したらお浄土に渡れると説き、人々に死後の希望を持たせることによって救済しようと考えます。

 が、空海は浄土信仰をもって老、病、死の苦悩を脱しようと説いた文章は見当たらないそうです。

 兜率天は外にあるのではなく、自身の中にある。無常の理をしっかり腹にすえて了解することで、死の恐怖を逃れるという強化方法を用いたといいます。

 たいへん厳しい教えを自らに課して人生を送った空海

 だからといって、利他を放置したわけではないことは、満濃池など人々を現実的に助けることも数多く果たしていることからわかります。

 

 

 松長さんが、『理趣経』から、「布施」の部分を書き出しておられます。

 それは、4つの形があるといいます。

 ①資生・・物を施す

 ②法・・法を説く

 ③義利・・在家の人が出家の人に施す

 ④灌頂(かんちょう)・・本人が気づいていない長所を見つけ出してあげること

 

 ④灌頂布施が一番素敵なお布施です。

 相当に修行した人しかできないだろうと思いがちですが、ひょっとしたら、今、側に居る人がそのお役目を果たしてくれているかもしれません。

 気づかずに生活している自分はなんと幸せなことでしょう。

 今日一日、無事に過ごせるとはそういう守護があるからと、思うことから幸せは始まるように思います。