散歩の途中で、大きなタケノコを抱えた父子を見かけました。
彼らの向かう先は、掘ったタケノコの集積場所です。三々五々、近くの竹藪から戻ってくる人たちはみんなタケノコ掘りの参加者です。今から、分けるみたい。そういえば、去年も見た光景です。
今年もたくさん収穫できて良かったですね。
タケノコを「筍」と書くのは、成長速度と関係します。
「旬」という字は10日間を指します。上旬、中旬、下旬の30日で1ヶ月。
タケノコは、生長が速くて、1日に1m伸びることもあるそうで、10日も経てば、竹になってしまうことから「筍」と書くそうです。
筍はあっという間に食べるには適さないほど成長してしまいます。
だから、旺盛な生命力を表現するタケノコは、春の代弁者とも言えます。
思春期、ニキビが花盛りだった頃には、“芽が出る”と控えた食品でしたが、この年になれば、どんなに食べてもその心配はなし。
牛肉、糸こんにゃくと一緒に甘辛く炊いたんも美味しいですよね。我が家の一押しです。
ところで、宮崎県綾町といえば、2012年に「ユネスコエコパーク」に認定されたことで、広く知られるところとなりました。
しかし、そこに至るためには長い地元の奮闘がありました。
1967年、町長の郷田實さんが、林野庁の照葉樹林伐採計画に反対して、保護運動を訴えたことが発端です。
産業のない山あいの町を開発するために、山の木を切ることを国が推進しようとしたのを、郷田さんが身を挺して反対されました。
身に危険が迫っても、動じなかったと聞いています。
子や孫の未来を真剣に考え、どっちが正しいかを見定める目を持つ人がいたから、綾町は守られました。
リーダーは、事の大小や時代に関係なく適材が適所に現れます。そのことも、誰かの配材ではないかと私は思ってしまうのです。
その、綾町の薬局に「かぐや姫」という化粧水が売られています。
かわいらしいネーミングでしょう。
これは、竹水を集めた化粧水です。
「どういいの?」と訊いた私に、
「使ってみたら分かる」と応じたのが、郷田實町長の娘さんである美紀子さんです。
「私はこれ一本よ」と、付け加えられた言葉を信じて、彼女のことが大好きな私は、去年からずっとこれ一本を続けています。
竹水って何かとお思いの方に説明しますと、竹には節の中に空洞があります。それこそ、かぐや姫が隠れていた場所。そこに溜まる水が竹水です。
新しい年に生えてくる竹を下から数メートルで先端をカットして二週間ほど放置すると、節の中にチャプチャプと音がするほど溜まります。竹の生命力が根っこから汲み上げた水です。
誰が見つけたのでしょう。
この水に美肌効果が期待できるなんて。
いずれにしても、タケノコの季節になると思い出してしまう美紀子さんです。
お元気にされているかな。あの笑顔にまた会いに行きたくなってしまいます。
笑顔の美しい人です。