こころあそびの記

日常に小さな感動を

清明節

 

 雪解け水が瀬音をたてて流れ出し、清々しい空気の中に陽は巡り、月が上る。

 「清明」。なんて美しい言葉でしょう。

 

 「   清明

  清明時節雨紛々

  路上行人欲絶魂

  借問酒家何処在

  牧童遙指杏花村  」

 

 毎年、お決まりのように杜牧(803~852年)のこの詩を掲載して申し訳ありません。

 年を経るごとに、それまでは分からなかった感慨を見つけることができるところが漢詩の魅力です。

 一行目の「雨紛々」。清明節に雨が多いのは、今だけじゃなかったのですね。晩唐に生きた杜牧が見たのは、雨の中で杏の花が遠くに霞んでいる景色です。その絵を思い描くだけで心が鎮まる思いがします。

 

 

 枝垂れ柳が芽を吹き出しています。

 「柳緑花紅」という禅葉は、柳は緑、花は紅というありのままの姿を表して、悟りの境地を表しているそうです。

 もともとは日本になかった枝垂れ柳ですが、中国から入ってきたのち、風に揺れる姿を珍重してあちらこちらに植えられました。

 銀座とか高瀬川沿いとか。

 

 

 里の桜が咲ききらぬうちに、今年は山桜の方が先に咲いています。

 山肌に、桃色のパッチワークがかわいらしいことです。

 

 

 まだ始まって三日目ですが、『寅に翼』をごらんになっていますか?

 『どうする家康』と同じマーク型のタイトルです。

 もちろん、これはデザイナーの方の作品でしょうが、このような形に収めたくなる発想は「はんこ」からきているよう思えなくもありません。

 「はんこ」は日本発祥ではなく、そのルーツはメソポタミアにあります。

 はじめは、楔形文字を粘土に押していました。今、若い人の間で流行っている封書を閉じる封泥の原点はここにありました。

 それが、中国に渡り篆刻となり、日本に根付いたという流れです。

 

 

 その『寅に翼』のテーマソングを米津玄師さんが歌っておられて、その歌詞の中の主役が「ツバメ」なんです。

 「ツバメ」といえば、『地上の星』で大役を仰せつかっています。

 ツバメよ、地上にある見えない星を高い空から見下ろして探しておくれ。

 中島みゆきさんの作詞力の凄さを何度も口ずさんできました。

 米津玄師さんは同じく「ツバメ」に何を託そうとされているのでしょう。

 近頃、アリーナに行くと、田んぼの真ん中に立つ私の周りをツバメたちがぐるぐる旋回してくれます。

 長旅の疲れも見せず力強く飛び回る姿を追っていると、目が回りそうになります。

 米津さんも、こんな光景に出会われたのでしょうか。どこから来てどこへ行くのやら。

 100年末先でまた会いましょう!!

 ツバメの飛来が彼にインスピレーションを与えて書かせた詩の意味が知りたくて、毎朝聴くことになりそうです。