昔、茶の間の窓は細かく切り込みが入った飾りガラスが嵌められていました。すぐ外には、大きな枇杷の木があって、毎日、ヒヨやモズが遊びに来ていました。
掘りこたつに足を突っ込んで、窓に葉陰が揺れるのを感じながら、うつらうつらと小鳥の声を聞くともなく聞く時間は、今から思うと至福の時でした。
仕事場で何がさみしいって、日暮れが早くなることほど気持ちが萎えることはありません。
働く時間は同じなのに、なぜか、暮れる時間が早くなるとさびしくなるのです。
でも、反対に窓の外に明るさが増してくると、俄然、元気が出てきます。縛られていた縄がほどけていく感覚です。
若いときには気に留めることさえなかった、こんなことも何十回と四季を生きて初めて分かるようになるとは鈍感なことです。
それでいいのですよね。若いときには若い楽しみ、年寄りにはそれに応じた喜びが与えられていることに感謝です。
今、まさに寒中最中となりました。
中国の友人が届けてくれたこの小寒カード。
小寒の由来が書いてあります。
今から、一年で一番寒い季節ですが、それだけではないのです。
冬至を過ぎて、一陽来復。陽光は日増しに明るさを取り戻しつつあります。
寒中は次にやってくる春という希望の萌芽を感じる季節でもあるのです。
この中国の友人は河北省奉天出身です。満州といわれた地域でしょうか。それはそれは、寒い地方です。
その土地では「冬、病気で伏せっていた人も、春が来たら治る」と信じて、凍る冬を過ごしておられるそうです。
寒ければ寒いほど、春到来への思いは強く、人の心情は希望に膨らむことが察せられます。
どんなに寒い日でも、昨日よりも明るくなっています。
その明るさに気付いて、窓に映る日の光を感じたら、縮こまった心が解放されていく気がします。