「からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。
からたちのとげはいたいよ。
靑い靑い針のとげだよ。
からたちは畑の垣根よ。
いつもいつもとほる道だよ。
からたちも秋はみのるよ。
まろいまろい金のたまだよ。
からたちのそばで泣いたよ。
みんなみんなやさしかつたよ。
からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。」
からたちの花の様子はこの詩に尽きます。五連目の、泣いたこと、優しかったことがからたちのイメージをより鮮明にしてくれます。
からたちは中国、長江上流原産で”唐橘“(カラタチバナ)からなまったといわれています。
出会いを待ち望んでも、会えるかどうかは時の運。それは人でも花でも同じことです。ちょっと油断していたら、楽しみにしていた近くのからたちの生け垣は花の時期が過ぎていました。それでも数輪、今年のからたちが写真に収められたらことはラッキーなことでした。
からたちのトゲの鋭さに比べて、花の繊細な姿はどうでしょう。この芳香をアゲハチョウが好むというのもなにやらドラマチックです。
からたちは枳殻として、生薬に使われ、その性味は苦、酸、微寒で芳香性の健胃に役立ちます。柑橘系のスッとする良い香りが胃の熱を冷ましてくれます。
さてさて、京都駅から北に歩くと「枳殻邸」という名庭園があります。枳殻で囲まれていたから、この名前で呼ばれていたと、昔乗ったタクシーの運転手さんに教えてもらいました。それ以来、この静かな雰囲気が好きで、京都駅に降り立つ時は必ず訪れるお気に入りです。
その庭園を後にして、子供時分よく遊んだ懐かしい七条から京阪電車で出町柳まで行って、豆餅を買うため並びます。6月が近づいたら“水無月”をまた買いにきますね。
もう一度、京阪電車で四条まで戻って、お殿様の個展を拝見いたしましょう。お殿様と思しき方がいらしたら目が合わないようにしなくちゃね。ドキドキします。
お殿様とは細川護煕元首相のことです。去年上梓した拙著にお殿様の作品のことを書きましたので、お贈りしたところ、お礼状をいただいてしまいました。あぁ、もったいない、もったいないことでございました。
そんなお殿様の個展。是が非でも行きたいのに緊急事態宣言発令下では・・泣く泣くこのような心旅に留めて今日を過ごしています。