こころあそびの記

日常に小さな感動を

ドジョウ

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 「流体力学」という学問があることを初めて知ったのは、高校生の時でした。数学を教えてくれた家庭教師の学生さんが流体力学を勉強されていました。
 確か、飛行機の絵を書いて説明してくださったように記憶しています。
 テクノロジーは計算だけで進化しているように思えますが、実は、空気の流れを“美しい”と感じる人がなせる技だということに感動を覚えます。
 車も飛行機も、自然界をヒントにより高度な進化を遂げました。
 新幹線の初代のこだまは団子鼻。次に尖った顔。それでも、トンネルの入り口の爆音が止まなかったので、考えのヒントになったのがカモノハシの嘴です。
 流線型は魚に学びましたし、新型リニアはアホウドリに学びました。
 これはほんの一端。見回せば多くの製品に自然の摂理は応用され役立っています。
 今日、報道がなされた「腸呼吸」も、ドジョウの腸呼吸がヒントになりました。
 ドジョウは水中の酸素が不足すると水面に顔を出して空気を含み、お尻から二酸化炭素を吐き出すことが知られていました。
 それを、コロナの重症者に応用できないかと考えた研究者がいました。答えは直腸に送り込んだ酸素は利用されて、血中酸素濃度の改善がみられたといいます。
 自然界に溢れる情報をつかみ取れるのは、いつもいつもその一点のこだわりを持ち続けているからです。その姿勢が、ある時天の啓示を受けられるのです。
 これは、古代中国医学を形成した人たちと同じではないでしょうか。理屈抜きに見つめ続けた観察眼で真理に到達したのだろうと推測します。
 五行色体表のグループわけによると、肺のグループに大腸、皮膚が入っています。
 三大アレルギーも肺を侵す喘息、皮膚のアトピー、腸に現れる過敏性腸炎と、この3つが深い繋がりを持つことを示しています。
 蛇足ながら、ドジョウも人間も皮膚呼吸という方法も持っています。
 私たちが呼吸は肺でするものと決めてしまっているのは、教科書でそのように教え込まれたからだけなのです。一つに固定されると、それ以外は考えられなくなるのが人間の弱さです。
 自然界はたくさんの方法を示しているのに、見えない。それを見抜く科学者は、やわらかい頭と真摯な観察眼を持つ人であることは、歴史が証明しています。
 原始、腸から始まって人間の体は進化してきました。唯一無二だと思い上がっていても、ドジョウと同じ機構が組み込まれて私たちは生きている。共生共存の根っこです。そのことに気づかせてくださった研究者に心から拍手を贈りたいと思います。
 そして、コロナに喘ぐ人類に小さな生物がヒントをくれました。ドジョウさんありがとう。