こころあそびの記

日常に小さな感動を

あなたを守る盾

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 今日、近畿北部は何年ぶりかの豪雪となっています。  
 雪化粧を期待して見渡したところ、我が家から見える範囲では山の高いところが白くなっているくらいでした。
 それにしても、不思議なことです。
 気象学にも地理学にも疎いのですが、山があるだけで、その南側にはよほどのことがない限り降雪がないのはどうしたことでしょう。

 いわば、山が北風を防ぐ屏風になって自然の要塞の働きをしてくれています。
 
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 屏風つながりで、漢方に『玉屏風散』と名付けられた薬があります。
 外からの邪気を、この薬が盾(屏風)になって防いでくれることから付けられました。なんと上手い命名なのでしょう。
 私たちの体の外側は衛気という「気」で守られています。自衛の衛です。これを西洋医学では免疫力と称しています。
 繰り返しになりますが、「気」は食べ物を消化してできる精と、天から降り注ぐ気から得た精と、親からもらった精から出来ています。
 消化吸収がスムーズにできる胃腸と、深い呼吸で天の気を取り込むことのできる肺と、親からもらった精を蔵している腎。
 いのちの在りかを探ろうとすれば、ここを外しては語れません。
 
 さて、この衛気が少なくなって、屏風の働きが衰えると、鼻水が出たり、汗をかいたり、風邪をひきやすくなったりします。
 そんな症状は春先のアレルギーによくみられますから、『玉屏風散』は春によく飲まれる薬です。
 主薬の黄耆(おうぎ)は補気薬の王様です。
 不足している気を補うことで、皮膚のバリアを強化し、外から迫る邪を寄せ付けないようにする結果、鼻水を止めます。
 
 一方、鼻水が出るからと、「小青竜湯」を特効薬と信じてせっせと服用される方があります。
 若くて元気があるうちはよろしいのですが(中庸に戻す力がある)、高齢になると気が減ってくるため(傾きを治せない)副作用が出やすくなります。だから、高齢者は注意が必要です。
 
 「小青竜湯」はどのようにして鼻水を止めるかというと、交感神経を刺激することで止めます。
 例えば、朝、鼻水が出ていても活動を開始したら、あらっ?止まってるという経験はないですか?
 興奮して、体が温まってきたら止まる。水洟といわれるものは、体が冷えているサインでもあるのです。
 それと同時に、交感神経を興奮させるということは、人によっては血圧が上がるという悪影響が出ることが考えられます。
 先日も、処方通りに1日3回律儀に飲んでおられる高齢者がありました。小柄な女性でした。
 降圧剤を服用しているにも関わらず、最近、血圧が高くなっているとおっしゃっていました。断言する事はできませんが、影響はあるかと思います。
 「この薬はね、血圧に影響するかもしれないから、鼻水が出たときだけ飲むようにしてね」とお送りしました。
 
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 同じように鼻水が出るという症状でも、冷えているから出るのか、気(免疫力)が少なくなって出てくるのか。原因を知ってから対処法を選ぶことが大切です。
 それが自分のいのちを自分で守ることになるはずです。