こころあそびの記

日常に小さな感動を

山の神

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 私が学生だった頃、「林業」という仕事は風前の灯火でありました。
 そうなっても仕方ないというほどきつい仕事であることを、その後、私も知ることになります。
 それは、義兄が、山で松食い虫の被害を食い止めるために松を伐採中、思わぬ方向に倒れてきた大木の枝で背中を強打して半身不随になった悲しい事故を経験したからです。
 山は怖いもの。それは忘れられない教訓です。

 それでも、木々は私達の生活になくてはならないものであります。なぜなら、私達自身が自然界の一員であり、樹木の仲間だからです。木の側に居ると、落ち着くという感覚は全ての人がお持ちでしょう。
 オリンピックの競技場や会場にもたくさんの木材が使われているといいます。それは、リラックスした中で集中力が発揮できるという、樹木の恩恵を考えてのことです。選手の皆様が清々しい気持ちで競技に臨んでいただけたらと念じます。

 折しも、朝ドラ「おかえりモネ」では、林業がクローズアップされています。登米という“森”と、気仙沼という“海“が、水を通して循環していることをテーマにしています。
 海と山は守り合っていることが認知されるようになって、若い人にその重要性が伝わればいいなと思います。
 離れた海と山をつなぐものは、水であり、養分です。緑豊かな山が、豊穣な海を実現します。
 あらゆる生物はこの大きな循環の中で健康に生きることができるように作られていて、この循環を外れた所にいのちはありません。


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 どうしたことでしょう。また言葉をなくすような出来事がありました。
 私達を支えてくれているはずの自然が牙を剥きました。
 毎回毎回、手を変え品を変え場所を変えて、襲いかかってきます。全てを巻き込みながら、山から谷に沿って下る土石流の映像は恐怖以外の何物でもってありませんでした。
 あらためて、誰もが、災害被害者になる可能性があることを覚悟しておく必要があります。
 しかし、どんな災害地も、当初の取り乱しが収まった後、人々は必ず前を向いて歩き始めます。
 この世で経験させられる障害は、人それぞれです。でも、それらを乗り越えたという自信が、奢りではなく謙虚さになって人は育てられていくのかもしれない。そうでも思わないと、天の計らいごとの意味がわからない浅はかさをお許しください。
 怖い思いをされた皆様のご無事を祈るばかりです。