こころあそびの記

日常に小さな感動を

精神科医の腕の見せ所

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 こんな所に、と思う場所で棗を見つけました。思いもよらない出会いはうれしいものです。
 熟して真っ赤になったら、大棗。中国ではおやつ代わりに食べる生薬です。とても甘味が強いから、脾胃に効きます。胃腸が元気になれば補気力が増強できますから、多くの漢方薬や薬膳に使われています。
 良品ならば、煎じなくても齧って食べられるところが人気の理由です。秋になって、夏の疲れを感じる方にはおすすめです。

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 さて、本日は秋分の日。秋の彼岸の中日。
 
 家族が休日モードなので、自分の出勤を忘れそうになりました。危ない危ない。
 出勤先は、いつもの老人施設です。
 薬剤師がそこで何の仕事をしているのかを、少しお話ししてみたいと思います。
 一昔前までは、医療はお医者さまを頂点としたヒエラルキーで成り立つものでしたが、現在は医者、施設のスタッフ、ヘルパー、ナース、薬剤師などが輪になってチームで介護医療に取り組むように変わってきています。
 ですから、ドクターの施設往診日はそれらの関連従事者が付き添って、まるで、部長回診のようです。
 本人の状態や家族負担など、それぞれ事情は異なりますが、老人施設の入所者さんは、家での介護が難しくなった方が殆どです。
 診察の結果、薬が変更、追加なとがあれば、薬剤師が対応して、配薬カレンダーを処方通りに変更します。
 このような同行でいつも考えさせられることは、なんと薬剤師は役に立たない存在だろうということです。これから、薬剤師を目指す人には、法律改正をしてもらって、もっと働きがいを得られるように願っています。

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 閑話休題
 施設入所者にとって、何科の先生を必要とするシーンが多いと思われますか?
 勿論、循環器系の先生も大切ですが、落ち着いている高齢者なら薬を変更することはまずありません。
 それよりも、自分を見失って暴れる、暴言を吐く、徘徊する、失禁を撒き散らす。などの症状を調整する薬が必要になってきます。一人住まいならまだしも、団体生活である以上、迷惑がかからない程度の抑制が必要になるからです。
 これは、経験に基づく知識がなければできないことで、それができるのは精神科医なのです。
 患者さんへの対応が難しい精神科をなぜ選ばれたのかと、いつも疑問に思っていましたが、こんなところにやりがいがあったのですね。
 老人社会にこそ、必要だったのです。
 誰でもそうはなりたくない。けれども、長寿が担保されれば、損なわれるところが出てきて当然です。その悲しい現実をコントロールする精神科医を志望することは、敢えていばらの道を選択するようなものともいえます。
 同行させてもらう精神科医の見事な薬の使い方にいつも恐れ入るのです。