小学生のころ、家庭教師のお兄ちゃん先生に「女の子は足を揃えておくもんだよ」といわれて傷ついた痛恨の一枚は、宝塚ファミリーランドで撮った写真です。せっかく晴れの日のワンピースを着せてもらっているのに、仁王立ちでした。
両親に女らしさという養育目標はなかったようです。
しかも、近眼だったせいで、幼い頃の写真は顔をしかめたものばかりでろくなものはありません。
そんな中で、一枚だけ自慢できる写真があります。
それは、幼稚園の何かの祭典だったのでしょう。マリア像の前で、天使の羽を付けて真っ白な衣装で座っている写真です。
お友達はみな騒いでいるのに、一人静かに瞑目して腰掛けているのが私でした。
両親に信心深さはありませんでしたが、教師をしていた母の従姉に薦められるがままに通った幼稚園でした。
朝、聖堂でマリア様にお花を入れて差し上げたことをうれしく思い出します。
そんな、環境の中で、讃美歌を耳にしていたのでしょう。
星空を見る度に、「月なきみ空に きらめく光~」と口ずさんでしまいます。
これは、明治43年に杉谷代水作詞で「星の界」として文部省唱歌になったものでした。それ以外にも、讃美歌312番のメロディーに日本語の詩をのせたものが、いっぱいあるようです。
そのどれもが、広い宇宙に散りばめられた星の世界を歌っています。星空に感じるものが万人に共通の清々しさであることに安堵します。
「ソ~ソラソミドドラ~」というメロディーは日本人には耳さわりの良いものですから、結婚式で312番の讃美歌を歌うときも違和感なく歌えます。
「everything to God in prayer(祈りですべてを神に捧げん)」
宗派を超えた人間の祈りです。
同じく、星空を歌う『冬の星座』があります。
「木枯らしとだえて さゆる空より
地上に降りしく 奇(くす)しき光よ
ものみな いこえる しじまのなかに
きらめき揺れつつ 星座はめぐる
ほのぼの明かりて 流るる銀河
オリオン舞い立ち スバルはさざめく
無窮を指さす 北斗の針を
きらめき揺れつつ 星座はめぐる」
アメリカ人ウィリアムヘイスの原曲に堀内敬三が詩を付けて昭和22年に文部省唱歌になった歌です。
冬の冴え冴えとした夜空の星々を思わずにはおれない美しい詩です。冬一番の楽しみです。