こころあそびの記

日常に小さな感動を

立山は神からならし

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 娘たち家族が無事に帰ってきてくれて、一安心しました。たった一晩の留守居でも心細いことでした。
 富山在住のお友達が厳選してくださったというます寿司を家族みんなで美味しいねと分け合っていただきました。
 住みやすさでは必ずトップスリーに入る富山。持ち家率や同居率、共稼ぎ率も上位です。家族みんなで支え合う温かさがあるから、厳しい北陸の冬を乗り越えることができるように思います。
 私の一押しは雪の立山が見える日です。その清々しさは他に例えようもありません。心を洗う。そんな清冽な美しさです。街中に居ながらにして、雪の屏風が見える富山は選ばれた場所です。もし旅行中にこの偉大なお山が見られたなら、それはその人が選ばれた人ということでしょう。

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 奈良時代、その富山に赴任したのが大伴家持です。都落ちしたような侘しさから立ち直らせてくれた富山の自然は、彼にたくさんの秀歌を作らせました。
 それは富山の人々の誇りでありましょう。その証が高岡市にある「万葉歴史館」です。毎年、奈良時代の装束を身に着けて夜通し4530首の万葉歌を読み上げます。過日、里中満智子さんも参加されていることを知り、ミーハーの私も行きたくなりました。いつか、いつか。
 
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 「馬並めて いざうち行かな 渋谷の
 清き磯廻に 寄する波見に」巻17 3954番

 「立山に 振りおける雪を 常夏に
  見れども飽かず神からならし」巻17 4001番

 
 氷見の方から富山湾を隔てて見る雪の立山連山の景色は、運が良くなければ目にすることはできないものです。
 しかし、見ようと思えば、今も遠い昔に家持が感激したのと同じ景色が見られます。何日か逗留を要するかもしれませんが。
 雨晴海岸(あまはらしかいがん)。その名前に願いがこもっていそうです。
 

 豪族の首長として生まれつき、才能に恵まれていたとなれば、思い上がりがみられてもよさそうですか、彼が詠む歌は、情緒的です。
 富山の自然が影響したのは間違いないでしょう。
 海を知らない彼に波の音を教え、見たこともない高い山から自然への畏敬を感じさせた富山は、歌詠みとしての道を大きく花開かせた場所でした。

 再訪したい富山です。