橋の下からお母さんが呼ぶ声が響いてきます。
「早よ来なさい!」
「こわっ!お母さんが怒ってる。早よ行こ」と子供の鴨が遊ぶのを止めて、お母さんに合流。
よかったよかった。四羽が下流に向けて泳いで行った後に、あれあれ、一羽の雄鴨がやってきました。
「みんなどこだ?お母さんについていったのかな?」
トンマなお父さんの姿に、生きるということはどの社会でも同じで、ちょっぴり悲哀を含むものであるという現実を垣間見たりして。
置いてきぼりのその雄鴨がコンクリートの関をヨタヨタやり過ごす間、マガモの綺麗な色をしばし楽しませてもらいました。
しばらく行くと、カルガモが盛んに餌あさりをしているところに出会いました。明らかに、先ほどの鴨とは大きさが違います。立派な体格?の鴨です。
今度はかわいくて頼りない鳴き声が聞こえてきます。
誰だ?声の方へ歩いて行ったら、家族にはぐれたのかコガモの子が泣いています。上流へ泳ぎながら泣いて家族を探しています。そして、ついに関を上れずに、浅瀬に上がって泣いています。
助けてあげられなくてごめんね。お母さん、早く来てあげて、と祈りながらその場を離れました。
「夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘がなる
おててつないでみな帰ろ
カラスといっしょに帰りましょう」
山の端にお日様が沈むから、もう帰ろうという子供は幸せです。お日様と友達だから。
夕焼けがはじまったから帰らなくちゃと思う子も幸せです。赤く染まることを知っているから。
公園の時計が5時を指したから、チャイムが鳴ったから帰る子はえらいです。
お母さんが心配して迎えに来てくれる子は、誰より幸せです。
それが幸せだったと分かるのは、ずっとずっと後のことで、心の思い出を引っ張り出すようになってからのことです。
今日も路傍のたくさんのお地蔵さんに合掌してきました。どのお地蔵さんもよだれかけをなさって、お花もお水も供えられています。
通る度にありがたく思っています。感謝。
子鴨がお母さんと会えますように。合掌。