冷たさに身体を固くして外に出たら、あたりが明るくてキラキラしています。
近くのマンションの窓に光が当たって反射する金色の光の恩恵です。うれしい季節になりました。
それにしても明るいなぁと、後ろを振り返ると、出勤時刻には見えないはずの朝日が上っているではありませんか。
そうか、だから、明るさが違ったのですね。
春は名のみではないことを感じた朝でした。
先日、知人からご相談を受けました。
受験生のお子さんが「起立性調節障害」という病名で不調が続いています。どうしてやったらよいでしょう。というものでした。
一年のうちでも春先はそれでなくても、フラフラする季節です。あらゆるものが芽を吹き始める季節は、「木の芽どき」と呼ばれます。フワ~っとする浮遊感はこの季節特有のものです。それに加えて、初めての受験。子供なりのストレスは計りしれません。
そんな一般論はさておいて。私は臨床家ではないので、懇意にしている臨床家にお伺いしました。
生活リズムはどうですか。
お食事はどうですか。
と、訊かれた後のアドバイスが腑に落ちるものでした。
「『梅干し』が効いたという人もありましたよ」。
特に朝ご飯に梅干しを摂取することで、二つの効用が考えられます。
一に、塩分が身体を温めて循環を促し目覚めを助けます。減塩がすぎる人にはおすすめです。
二に、「酸味」です。酸味は収斂作用があります。フワフワした感じをきゅっと引き締めるように働くはずです。
漢方薬など一通り話した後に、これも教えてもらった話ですけどと前置きして、「添い寝」で治った人もあると付け加えてくださいました。
私はこれだ!と直感して、お悩みの方にお伝えしました。
なんと、「思い当たることがあります」と即答されたのには、驚きましたが、母親業をしたことのある人間ならみんな思い当たることのある妙策です。
十五歳。体も心も大人になる手前です。中身はまだまだは子供。そんな微妙な年齢で受ける、初めての試練です。
逞しくなるためにと突き放さずに、目をかけてやることが何よりの薬であることは、人間が心を持つことの証です。
電話のお声が一瞬で明るく弾んだので、もう大丈夫。
お母様にも春がやってきますように。
何か不調が起こったら、直ちに治したい。その気持ちが、よく効く薬を探すことに直行させます。それが人間です。
でも、人間だから薬より先に思い至らねばならないものがあります。それは、デリケートな心を守れる強くて温かい愛です。