「有朋自遠方来 不亦楽乎」
(朋有り、遠方より来たる。
また、楽しからずや)『論語学而篇』
昨夕、この言葉通りのことが起こりました。
日没が早くなり、あたりがとっぷりと暮れて、街灯も輝き出した頃でした。
何度も何度もチャイムが鳴って、犬が鳴き続けます。
誰かいるはずとたかを括っていましたのに、家人が応答する様子もありません。
就寝前の中国ドラマに没頭していた私も、いよいよ腰を上げるしかないと観念して、戸口に出てみてびっくりしました。
そこには、困った様子で、「置いて帰ろうか」と、薄暗い街灯の明かりの中で、うろたえておられる高齢の男女がおられたのです。
小西さんご夫妻でした。
お待たせした無礼をお許しください。「ごめんなさい」というお詫びも、うわずってしまいました。
「こんなに暗くなって、足元も見えないのに、よく来てくださいましたね」
「もう、お家の場所もわかってるから」
「えっ?歩いて?」
「いやいや、電車で来ました」
よくぞ、夜道をお訪ねくださいました。
小西さんは「杏☆漢方セミナー」を始めた時から、私たちを応援し続けて下さっている大恩人です。
その心は「自然を愛す」同志にあります。
昨日、抱えてきてくださった新聞紙でくるまれた花は「ショウガ」でした。
奥様の「ショウガの花は珍しいから、お持ちしました」というお言葉に感激して、鼻を近づけると、確かにショウガのような、ゆりのような匂いがしました。
自然を愛する同志といっても、私は町っこ。花々に疎くて申し訳ないほどです。
そんな私に、お二人して遠路をお運びくださったのです。どんなご縁を感じて下さっているのでしょう。ありがたくて、お帰りの道中の無事と感謝を、後ろ姿に祈りました。
さて、帰られてから、とりあえず水上げのために、バケツに水を張って挿しておきましたら、程なく廊下は匂いで充満。
さらに、今朝になって、花瓶に挿そうと葉を切ると、新生姜を切ったときと同じ匂いがしました。
Googleで検索したら、ショウガ科のイエロージンジャーが近縁種で、インドや中国南部が原産の多年草だそうです。
漢方に「砂仁(しゃにん)」という行気薬に分類される生薬がありますが、これと近いことがわかりました。行気とは、気を巡らせるという意味です。香りあるものが、滞った気を動かしてくれます。
砂仁の性味は辛温芳香。
“辛”は乾かすとか散らす働き、”温“は温める作用を持つということです。
どんな薬でも、使ってはいけない人がいます。この薬に関しては、まず、乾かす水のない人はダメです。つまり、干上がってる陰虚体質の方。また、巡らす気が元々不足してる人も使えません。
薬の効能は個々人で変わります。お気をつけいただきたいところです。誰かに良くても、あなたには害になることさえあるのです。
そこに、生きる真理が含まれているように思っています。
ショウガには美しい花が咲くことと、強い芳香があることを教えてもらいました。
小西ご夫妻のお心と共に、いつまでも忘れないことでしょう。
ありがとうございました。