こころあそびの記

日常に小さな感動を

稲盛和夫さんに教わったこと

 二十世紀の物質の時代から、二十一世紀は精神性に移行する、とは多くの書物や言動に見ることができる予言です。

 それはどんなことから始まるのかと訊かれたとき、説明できずにいましたが、昨夜見た『100年インタビュー 稲盛和夫』で、彼が一端を説明してくれました。

 「これからの100年で世界人口は100億人に達するでしょう。食糧問題。エネルギー問題。課題を克服して人類が生き延びれるかどうかは、利他の心に目覚められるかどうかにかかっています。」

 物を奪い合う欲望が幅を利かすばかりの心貧しいままでは、二十一世紀の困難を乗り越えることはできないとおっしゃっていました。

 みんなが分かち合う精神、利他の心を育てるという意識改革が必要です。しかしながら、それは改革ではなく、どの人の中にも奥の方に眠っている素晴らしい心根を目覚めさせるだけでよいのです。

 誰もが持っている優しさや譲り合いが二十一世紀を救うことになるなんて、思いも寄らない妙案です。

 

 

 稲盛和夫さんは先月お亡くなりなりました。

 先日、高千穂を案内してくださったタクシードライバーの方が、前日にこの放送を観られたようで、その感想を車内でとうとうと話して下さったことです。

 私も初回放送を見た記憶がありました。著書も何冊か拝読していましたので、彼の言わんとするところはよく分かりました。

 日本じゅうに感動を置いていかれた稲盛和夫さん。

 今月号の『致知』に載せられたエッセイに、稲盛さんの小学生時代の同級生が執筆されています。

 題名は「忘れ得ぬ面構え 我が友稲盛和夫君の思い出」です。

 どんな面構えだと思いますか?

 それは、負けず嫌いで正義感の強かった稲盛さんを表していました。

 給料の遅配が続く会社から、独立を果たすまでのど根性物語は、彼の生来の負けず嫌いがあってのことだったと拝察できます。

 そして、ただの負けず嫌いに終わらず、経営という道に踏み出したときに考えに考えて見つけた光明が「利他」でした。

 

 

 インタビューを受ける83歳の稲盛和夫さんは、小学生時代のお友達の印象に残った「強い面構え」からは想像できない柔和なお顔で、稲盛さんの到達した境地を表しています。

 ご苦労を乗り越え、持ち前の負けず嫌いを生かして社会貢献された姿から、人は成長していけることを身をもって示してくださったように感じます。

 できて当たり前の人ではなく、熱い気持ちで生き抜かれたお人柄に多くの人の称賛が集まっています。