突然ですが、長崎雲仙の地獄谷で撮った白黒写真が一枚あったと記憶しています。もうもうと白い煙が上がる岩の前で、おばあちゃんと並んで立っている幼稚園児の私。
それ以来、長崎を訪ねるチャンスもなく今に至っています。
先日、西九州新幹線が開通したと報じられました。がんばれ長崎県人。全線開通したら、七十年ぶりに孫と一緒に行って同じ場所で写真を撮ってみたいと思っています。
さて、長崎は早くから世界に開かれた土地柄ですから、そこで育った人に一流人が出ても不思議はありません。
昨晩、NHK『プロフェッショナル~仕事の流儀~』は、さだまさしさんが登場されました。
いつかも、書きましたように、作詞家としての彼の表現が好きです。
『空になる』
・・いつか辿り着ける世界へ
僕は雲を抜けて
風と一つになる
僕は空になる♪
彼が頂上に辿り着くまでの体験や、その時々の苦しい思いが察せられる詩です。
番組の中で、作詞方法の一端を教えて下さっていました。それによると、キーワードを集めるところから始めるようで。
「自分の中に釣り糸を垂れる」。
いい言葉です。その釣り針にかかった言葉を拾い出して歌が生まれるそうです。
彼と私は同い年。彼が歩いてきた道を、本やテレビでリアルタイムで見て影響を受けてきました。
今、同年代の歌手が舞台を下りていく中で、彼は、現役を続行している貴重な存在です。
若いときに、それこそ、精神を病むほど苦しんだ。それでも、立ち上がって踏ん張ってきて、気がついたら生き残っていたといいます。
彼は、何回もおっしゃいました。
諦めなかったから、ここまで来られた、と。
「止めなければ失敗はない」。これは、松下幸之助翁だけの言葉ではなく、何かを成したすべての人が異口同音におっしゃる至言です。
昨日、さださんは、こうもおっしゃっていました。
「歌を歌うことを許された者には責任がある」。
聴いた人の心にすっと入って、その人が生きてきた道のりを肯定し応援し続ける責任でしょうか。
でも、彼自身は、つらくなる度に、長崎に帰ったそうです。
「長崎には恩がある」
この言葉を聞いて、喜ばない故郷はありません。