オオイヌノフグリやヒメオドリコソウがサクラの開花に先駆けて、咲いています。
とくに、オオイヌノフグリの小さな青色の花の群生は、目を引きます。
だからといって、表現方法が分からない素人ですが、俳人の子規は、こういうふうに表現しています。
犬ふぐり星のまたたく如くなり
空の星々に見立てる感覚は、さすがです。この句を知ってからは、オオイヌノフグリを見つける度に、空の星が落っこちてきたところを想っています。
昔読んだ本に、日本各地にある湖は空の星座の形そのままに、写されていると書いてあったような記憶が残っています。
どなたが書かれたものかは忘れましたが、そういう壮大な宇宙の話に逃げることで、孤独な青春は、癒されたのでしょう。
翻って、地上で好きなものは、人生のお話を伺うことです。
生、老、病、死。それを全うする何十年は、人それぞれに違って、誰一人として全く同じ道筋はありません。
それなら小説好きなのでしょ、と問われたら違うと答えてしまいます。
作り話ではない、一人の実際の生きざまに心奪われます。
でも、町を歩いているときに、すれ違う誰彼に、「すみません。お話聞かせてください」とは言えません。
だから、『ガイロク』を楽しみにしてしまうのです。
今日、コメンテーターの3人が揃いも揃って、「映画みたい」と感想を述べられたのが、七十代の男性のお話でした。
50代に、それまで勤めていた会社をリストラされ、さて、どうしようと考えたとき、自分に残っていたのは、趣味で集めた4300枚のジャズレコードでした。
それらを販売する店を立ち上げようと奔走。店も決まり、銀行からの融資も受けて、さあ、という日のこと。
朝、店に向かっていたところ、目指す辺りに消防車が集まっています。近づくにつれて足元は水浸し。
火事は、店の一階の飲食店からの出火が原因でした。
駆け上がった二階の店の中には、レコードが浮いていたそうです。
丁度、そこへ銀行の人がやってきて、「これは見なかったことにして、1ヶ月待ってあげる。」と、言い残して去って行かれたと言います。
それからの日々、店探しからやり直し。昔の仲間たちの助けを借りて、なんとか開店にこぎつけることができました。
融資も受けることができたので、お礼のご挨拶に伺ったら、当人は移動になって赴任先も教えてもらえませんでした。
今思うことは、あの時、彼が居なかったら、この船出はできなかった。
もし、この番組を見ておられたら、お礼を言いたい。あなたのおかげです、ありがとうございました。
崖っぷちから救い出してあげたこの銀行マンは、またどこかで、誰かに助けてもらっているかもしれません。
この世に陰徳がぐるぐる巡っていることを知るのは、生きる励みになります。
ひどいことばっかりしてきた私だから、そう思うのかもしれません。
実録を好むのは、私の憧れなのだとようやく気づいたところです。