こころあそびの記

日常に小さな感動を

「青いカフタンの仕立て屋」観てきました

 

 大阪駅がステーションシティに変貌を遂げたとき、南側には大丸梅田店、北側には三越が入りました。

 その三越に、「ファティマ」というモロッコバブーシュや香りを売る小さなお店がありまして、時々、覗いたものです。

 モロッコのイメージは、遠いエキゾチックな国という程度でしたが、ジブラルタル海峡を渡れば、スペインやポルトガルに繋がるアフリカの入り口であることは、映画『カサブランカ』で知っていました。

 

 近年は、シャウエンという街の青色に惹かれて、旅行される方が多いとか。

 家も道路も青色に染められた街はすっかり人気スポットになっていますから、一度は目にされた方も多いのではないでしょうか。

 なぜ青なの?

 大地の色に支配されている空間にあって、空の青い色がどれほど人々の心を癒やすものであったかは察することができます。

 青い空と黄金に輝く太陽が信仰心の根源であるように感じます。

 

 

 ”青“という一文字に誘われて、『青いカフタンの仕立て屋』というモロッコ映画を観てきました。

 

 

 シネ・リーブル劇場へは中津駅から歩いて行きました。大阪駅は北側のJR貨物ヤードを飲み込んで、北へ北へと進んでいます。

 かつて、阪急電車がコンコースを北に移動させたときには、歩く距離が長くなったなどと不満が聞かれましたのに、今は誰もそんなことは言いません。

 新しい街に希望を託して、今か今かと待っています。

 このぶんでは、中津駅の乗降客が増えるのは目に見えています。狭いことで全国的に有名になっているホームの改造計画はあるのでしょうかと、要らぬ心配はまたまた老婆心からです。

 

 

 真っ盛りの第二期工事を見ながら着いた梅田スカイビルの入り口では、「梅田七夕」飾りが迎えてくれました。

 

 

 映画は、一言でいえば、重かった。

 カフタンの縁のブレードとか刺繍とかが見たくて行ったのですが、内容は考えさせられるものでした。

 

 コーランの流れる街に住む仕立て屋夫婦が、一着の青いカフタンを仕上げるまでの短い時間のことが描かれています。

 

 文化の違いは

 シャワーの公衆浴場。

 タジン鍋

 禁じられた同性愛。

 

 ヒロインの乳癌末期の妻には、残された時間がありません。

 薬剤師として在宅訪問した日々を思い出して、そこだけはへんに冷静に見ている自分がいました。

 

 救われたのは、夫が妻を最後まで愛したことです。

 彼は、出生時に母親を亡くしました。そのことを、(おまえのせいで亡くなったと)父親に責められ虐待を受けた生育の呪縛から逃れられずにいます。

 愛されたことのない者を、安心できる”愛“で包容してくれたのが妻でした。

 だから、「私もこんな青いカフタンを着てみたかった」という妻の言葉を、最後に実現させてしまう夫でした。

 

 

 人間の心が求める愛は変わらないのに、国という集団になったら、文化や宗教や政治・思想などが付随してきて、純粋に愛せなくなります。

 国どうしが仲良くできない理由がわかったようで、それも鑑賞後の心の重さの一因になりました。