バジルが花を咲かせていました。
放ったらかしの植木鉢。存在を忘れられても、ちゃんといのちを育んでいることにびっくりした朝です。
「紫蘇の花に似てる」と言った娘の言葉通り、シソ科です。
インド原産のバジルはアレキサンダー大王にヨーロッパに持ち帰られて、ぐるっと回って日本にやってきました。
和名を「目箒」というから、薬草として使われたのでしょう。その香りは日本人には少し刺激が強すぎたのかもしれません。
「かわいいから是非見てね」と娘から伝達のあった、こちらもベランダに放置されたままの植木鉢。
ずいぶん前に、丸いかけらが落ちていたのを、娘が逆さまに挿していました。こんなの無理だよと内心笑っていましたのに、出てきたのです。
どうやって根っこを伸ばしたのでしょう。
虹の玉。多肉植物にはまる人の気持ちが分かるような気がします。強い生命力は、母なる土地、メキシコを思わせます。
紫陽花が、色を変えてしまいました。
咲き始めの白い薄緑から、桃紅色や青紫色に、そして、紫褐色と変化するから七変化。
そんな紫陽花が、七月に入り鮮やかな青紫色を消しました。
この中間色が好きだから、さびしくはありません。
学生時代、アートフラワーが流行りました。友人の作る花の色が好きで、教えを乞うたことが思い出されます。
一枚一枚、染めて鏝を当てて・・そういう工程を見ることで満たされました。自分には真似のできない静かな時間でした。
紫陽花やはなだにかはるきのうけふ
子規
紫陽花の花言葉に「移り気」とあります。
そうでしょうか。紫陽花の弁護ではありませんが、春から時間をかけてゆっくりと愛でることのできる花に、「浮気者」という表現はそぐわないようです。
梅雨の間のうっとうしさは、いつもそこに居てくれる紫陽花にどれほど癒されたことか。
光なき玻璃窓一めんにあじさいの
青のうつろう夕ぐれを居り
五味保義
丸くて、大きくて、たっぷりとした花が雨の日々に咲いているだけで、心まで彩られる気がします。
「移り気」よりも、「辛抱強さ」が合うように思います。それは、花期の長さというよりも、日本人の気質に起因するようでもあります。
紫陽花は西洋から輸入されたものではなく、日本原産の花が逆輸入されたと聞きます。
辛抱強く生きることを教えてた花ではないかと思えます。
さて、信州の紫陽花が秋を予感させるのは、あとどのくらいでしょうか。
紫陽花に秋冷いたる信濃かな
杉田久女