こころあそびの記

日常に小さな感動を

緑陰

 

 庭の桜が緑濃くなってきました。

 葉っぱが太陽を浴びようと必死です。一枚一枚が広がろうとするから木陰が出来ます。そのおかげで、その下に入ると暑さが凌げます。やさしい一陣の風があればいうことなしです。

 

 緑陰に染まるばかりに歩くなり

           星野立子

 

 滝道も、今、この俳句を実感できる季節です。

 

 

 

 またまた『らんまん』話です。

 徳永助教授は、和歌から植物を愛でる方という設定でしたが、そんな研究者がここにもおられました。

 本棚から『日本人なら知っておきたい四季の植物』という本を取り出して捲っていましたら、この著者も徳永助教授と似た方向から植物に興味を持たれたのではと思い当たりました。

 はじめの言葉に同感いたしましたので、書き出します。

 

 「日本には四季がある。それを豊かに彩る植物がある。わが国では古くから植物に関心が寄せられ、暮らしと結びついてきた。(中略)

 それらが暮らしと結びついて、何気なく見ている景観やありきたりと思っている行事の風俗など、その主役が植物であることは少なくない。」

 

 この文章を書かれた湯浅浩史先生を調べていたら、「セトウチマンネングサ」の論文を書いておられました。

 ちょっと待てよ。何週か前に『らんまん』で、牧野博士に発見された「マルバマンネングサ」の近縁種ではないの?

 更に調べていたら、マンネングサは世界の温帯から亜熱帯にかけて、470種も分布している多肉植物と分かりました。

 

 

 黄色い花が地面を覆うという写真を見て、ようやく気づきました。

 笑ってください。私の植物知識とは、その程度です。

 過日、庭で芽を出したと騒いでご報告した「虹の玉」。この子も、同じ種類だったのです。日本原産でした。

 つまり、多肉植物だから砂漠とは限らないこと。環境に順応するために、生き延びる選択をしたと知りました。

 これが、今日一番の感動でした。

 

 湯浅先生が書いておられるように、日本人の園芸好きは万葉の時代から続いているそうです。

 昨日の放送で、徳永助教授がユズリハを見て、すぐさま詠まれた歌、

 

 いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の

 御井の上より鳴き渡り行く

 

は、弓削皇子額田王に贈った歌だそうです。

 万葉の昔から、この国では、花鳥風月に思いを寄せてきました。そして、それぞれの歌に詠まれた教養の深さに恐れ入ります。

 翻って、浅学の我が身ですから、せめて、先人の残した歌にあるような心の余裕を、暮らしの中に感じたいと念じています。