昼下がりの太陽が、ずいぶんやわらかくなりました。
テラスに座っていると眠気に誘われます。まるで、縁側で居眠りしているおばあさんそのもの。
明日は雨予報です。
昨日の続きです。
『長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(吉森保著)。
私が学生だった頃、1970年代の始めは、遺伝子の二重螺旋が大発見されて間がない時代でした。
それまでの授業に全く触手が動かなかったのに、これにはちょっと興味が持てたので、珍しく本を買ったことを覚えています。
すべて生物科学の基礎になる二重螺旋構造は、ワトソンとクリックによって1953年に発表され、その後、1962年にノーベル生理学医学賞が贈られています。
偉大な発見と同時代に学生であったのですから、もっと勉強しておけばよかった。後悔というものではありませんが、ちゃんと理解できるところまで学ぶべきだったと、この手の情報を目にする度に感じます。
吉森保先生は、ノーベル生理学医学賞を受賞された大隅良典先生とご一緒に研究されてきたそうです。
いわば愛弟子。
大隅先生の発見された「オートファジー」はご記憶におありだと思います。
「オートファージ」とはなにか。
それは、いのちの恒常性を守る仕組みです。
同じ数の細胞が生き続けるには、一定数が死んでくれなければ、新生の細胞が誕生できません。それでこそ、恒常性が保たれるわけです。
死んで、生き残る戦法です。
「オートファジー」の研究で、はたして、老化や死を遅らせる未来を拓く鍵を手に入れられるのか。
紀元前から、人々は不老不死にこだわり、現代人はアンチエイジングにとりつかれているようです。
これらを求める人に、「オートファジー」は答えを出してくれるのでしょうか。
吉森保先生は、「老化と死を起こすプログラムはゲノムの中に隠されているのではないか。そこを究明できたら、すべての人が健康なまま、長生きできる社会が実現できるのではないか」と記しておられます。
希望が持てる未来です。
でも、今、できる健康法はといえば、朝食には納豆(発酵食品)やキノコ、夕食はチーズや赤ワイン。腹八分目と適度な運動。目新しい情報があるわけではありません。
「オートファジー」の探求で、死ぬことを回避できる日が来ても、私はこの世ですべきことが終われば死ぬことから逃げたくありません。
次世代の方々に、あとを任せるのも年長者の最後の仕事だと思うからです。
追記
吉森保先生の文章は読みやすくて、科学の本とは思えませんでした。65歳のベンチャー立ち上げ、応援してます。