こころあそびの記

日常に小さな感動を

風と空と雲

 

 今朝の空。

 上の方の白い雲は真っ白に輝いて、朝日がもうそこまで上ってきていることを告げています。

 その下を、灰色の塊が風に吹かれて北の方へ移動していきます。

 そして、その雲の下を鳥が西の方角に飛び渡っていく大空。

 

 空が高いことに感慨を深くした朝でした。

 しかし、どんなに空が高く見えても、私たちが見ている雲は地上から10kmあたりまでの対流圏にあります。

 飛行機に乗ると「只今、高度一万メートル上空を飛行中です」と、機長アナウンスがあります。

 いつか、機窓から外を見ましたら、雲はみんな下に見えますし、積乱雲が成層圏が途切れるところで”かなとこ“になっていたことを思い出します。

 10000mといっても想像しにくいですが、地球を林檎の大きさにたとえたなら、成層圏はその皮くらいの薄さだとか。

 そこから飛び出して、高度四十万キロの上空を飛んでいる宇宙ステーションの方々の勇気を思うばかりです。

 

 

 昨日も美しい夕空でした。

 買い物帰りに信号待ちをしていたら、南東の空で三日月が茜雲に乗っかっていました。

 シャッターチャンス!

 しかし、家にたどり着いて空を見上げた時には雲はいづこへ。それでも、夕焼けを目当てにいつもの高台へ上がってみました。

 

 

 刻一刻、変わっていくマジックアワーの空に見とれていたら、一台のバイクが坂道を上ってきて、直ぐ横で停まりました。

 人のお顔が判別できない時刻に差し掛かっていましたので、相手が男性となれば少しの躊躇があります。

 「いやぁ、きれいですね」と、その方の第一声で、緊張は解けました。

 「こんばんは。飛行機ですか?」

 「いや、今日は電車です。川西まで阪急電車の撮影に行ってました」

「電車のなにを?」 

「“ちいかわ”と、“紅葉の先頭プレート”です」

 すごいですね。好きだからゲットできる情報です。

 「まだ、来るんですか?ジャンボ”777“(トリプルセブン)」

 「(時刻表を見ながら)大丈夫です。」

 

 飛行機を待ちながら、しばらく四方山話をしました。

 

 彼の七十歳のお兄さんが、最近、ウインドサーフィンのウイングとプレートがくっついてないのを始められたそうです。

 前々からやりたがっていたのに、ウインドサーフィンは操作に力がいるからと、諦めていたそうです。

 ところが、最近ウインドフォイルという翼を手で持って浮き上がるスポーツができたようで、お兄さんは直ぐに挑戦。出来た!のだそうです。

 お医者さんも、指導者もびっくりしたのは、当たり前ですよね。七十の手習いがウインドフォイルとは。

 

 

 サーフィンという波乗りだけでも考えられないのに、なにを好き好んでそこまでと思ってしまうだめな運動音痴の私です。

 ウインドフォイルとは、風に乗って飛び上がれるスポーツだとか。それこそ、自分は大自然の中に生きていることを実感できることでしょう。

 

 カメラ好きの彼は、西宮の浜でお兄さんの勇姿を撮影するように頼まれることもあるといいます。

 仲のよいご兄弟であることを伺って、ますます安心してお話しを続けてしまいました。

 「ごめんなさい。飛行機行っちゃいましたよね」

 「大丈夫です。今日の(目的)は電車でしたから」

 

 

 風に乗って空を飛びたい。

 古代からずっと願ってやむことのない人類の夢の一つです。

 世の中は知らないことに満ちている。一生で出会えることの少ないこと少ないこと。

 ふと、謙虚という言葉が思い浮かんだ夕暮れでした。