こころあそびの記

日常に小さな感動を

マイ・パラダイス

 

 ようやく、クロッカスを土の中にしまいました。あとは、いっぱいねんねして、機嫌よく目覚めてくれることを待つばかりです。

 昨夜、加藤徹先生の『漢文力』をめくっていて出てきた言葉に、

 「成然として寝ね、蘧然として覚む」とありました。

 安らかに眠り、喜びとともに目覚める。

 クロッカスばかりでなく、私達も毎日をそのように送りたいものと思いました。

 

 

 ひさしぶりにスコップを使ったので、右腕が痛い。弱っちくなったもんです。

 気分を変えたくて、マイ・パラダイスに行ってまいりました。

 霞がかった大阪の町は遠くに浮かんでいるように見えて、頭上に広がる空は天頂に向かうほど青い。

 いつ来ても、決して裏切らない場所です。

 

 

 かわいらしい色合いのサザンカが咲いていました。立冬の初候は「山茶花咲」。なんだかんだと大騒ぎしなくても、自然は暦通りに巡っています。

 

 

 そして、今日は、二十四節気の「小雪」です。

 明後日からは寒気予報が出ていますが、きょうに限っては万人が気持ち良いと感じる好天です。

 

 

 大好きな場所で深呼吸して歩いていたら、今年、米寿を迎えたお年寄りとお話しすることができました。

 「ここは天国みたいなところですね」

 「そうでしょ。ここは、西側に山があるから暖かいんですよ。下の方にも畑があるけど、そこよりここの方が暖かいんです」

 「へぇ。山が寒風を遮ってくれるんですね」

 「そうです。皆さん、東に雲が出てきたら焦りはるけど、その雲は東に流れていくんです」

 「東に開けているから、生駒からの日の出も見えますか?」

 「見えますよ」

 「ここは本当にいいところです。わたしは、ここに来るといのちの洗濯をしたようにスッキリします」

 「いつでも来て下さい。そこに流れる水は山の水です。夏になったら是非、手を浸けてみて。すごく冷たいから」

 傍を流れる水の由緒まで教えてもらって、次の夏が待ちきれない思いがしました。

 

 

 次々と、いっぱいお話ししてくださるのをいいことに、長話になってしまいました。

 四国から、縁あってお嫁に来たこと。幼稚園児の曾孫さんがいることも。

 

 ご主人は先年91歳でお亡くなりになったそうです。

 「10年間、世話しました。リウマチだったんです。はじめのうちは電車で通院しましたけど、そのうちタクシーになりました」

 彼女が、「何かあったら私が辛くなるから、車は止めて」と懇願したら、ご主人はきっぱり免許返納されたのだそうです。

 「ご主人は奥様を愛しておられた証拠ですね」と言ったら、88歳のおばあちゃんがはにかむように微笑まれたのを見て、お元気の源はここにありと、うれしくなりました。

 健康の秘訣を、もう一つ伺いました。

 「肉です。魚では農作業の間もたないんです。肉を食べるとしっかり仕事ができるんです」

 高齢になっても、ステーキを食べられる人は長生きといいますが、ここにも証人がおられました。

 

 パラダイスで楽しい会話。

 可愛らしい笑顔とお人柄にすっかり魅了された散歩でした。

 こんなおばあちゃんになれたら最高です。