図書館から帰ってきたら、BSで映画『東京物語』(小津安二郎監督)が放映されていました。時間がたっぷりある午後でしたので最後まで観てしまいました。
制作年は1953年といいますから、私の生まれた頃です。
ですから、小津監督が描かれた設えの中に懐かしさがいっぱいありました。
壁に掛けてある買い物かご、ペン先を浸けるインク壺、蒸気機関車。
この映画の主役は、もちろん笠智衆さんですが、女性の方は轟由紀子さんです。
あの道具立ての大きいお顔だちは、今なら、お化粧でなんとでも作れそうですが、彼女の場合は持って生まれた造作でした。そして、あの髪型は、母の娘時代の写真そのままです。
父や母が憧れた大スター。
父は、私の赤ちゃんの頃の写真に「ドングリ目に団子鼻」と記しています。それが、当時の流行りだったのは想像がつきます。
「孫と会えてよかったな。なぁ、おまえは子と孫と、どっちがええ?わしは、やっぱり子どもの方がええ」と話すシーンが出てきます。
父も同じようなこと呟いていたことを、思い出します。
「子ほどかわいいもんはない」
家に見向きもしない父でしたが、そう言い残してくれたことでちょっと救われたように思ったものです。
突然ですが、このところ連日、報道されている大学の無償化の話をご存知でしょうか。
子育て中の我が家の若い夫婦が、耳をそばだてて一喜一憂しているのを見るにつけ、大学費用がどれほど若い世帯に負担になっていることかと察します。
まだ、確定はしていませんが、三人兄弟の一番上の子が大学生である間だけ、二番目の子にも適用されるというハラハラ感が、若い親を惑わせています。
そんなジェットコースターみたいな法律ではなく、子育てを継続して経済支援できる策は考えられないのかと思ったりします。
一方で、大学無償化が社会に及ぼす悪影響も出てくることでしょう。
ただでさえ大学の数が増えています。子どもの数が減っているのに増える学校数は、何か裏があるようで怪しげです。
それから、今や、就職のための腰掛けになり下がってしまった学校が山ほどあるのも解せません。
大学に限定せず、一人一人の希望を叶えるコースを作って上げれば、もう少し意義のある四年間を過ごせるようにも思うのですが、大学に補助金が交付されている限り、それもうまくいくわけありません。
旧制の中高校に通った父がよく言ってました。
「教育には金がかかるんや」
それは、彼自身が学生だった時には当然、意識しなかったことでした。が、卒業後、同窓生のご実家が実は裕福であったことを知って、そうだったのかと気がついたそうです。
今も、教育にお金がかかるのは同じです。
現在、収入が伸び悩む中で子育てをするのが、どれだけ大変かは理解できます。補助金がどれほどありがたいかもよく分かります。
ただ、うまくしないと学生が学ぶ生徒ではなくなる危惧は拭えません。人生100年時代を生き抜かねばならない若者たちの行く末を確かなものにしてあげるためには、どうするべきか。
ここが踏ん張りどころです。