こころあそびの記

日常に小さな感動を

啓蟄の巣穴にもどる寒さかな

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 寒のもどり。そういえば去年も、戻りすぎ!と書いた気がします。
 昔の大学入学試験は前期校と後期校の間に、ちょうど今頃、C日程だったっけ。大阪府立大学の試験がありました。
 なぜか、その頃に春の雪が降るのです。間違いなく降るから、これで冬が終わることを毎年感じたものです。
 今日は雪こそ降りませんでしたが、青空に白雲が流れたかと思えば、一転、灰色の雲からパラパラと落ちてきて慌てたりと、お天気は目まぐるしく変化した一日でした。
 その間、風だけは強く吹いて休まることのないことでした。東京はすでに春一番が吹いたようです。大阪より東にあるから春が近いのかな。
 大丈夫。もう春ですよ。春探しが楽しい散歩をしてきました。

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 引退が間近くなって、つくづく思うのは自分がおばさんになったことです。
 見た目がというのは言うまでもありませんが、面の皮が厚くなってしまったことに年月を感じます。
 薬剤師を始めた頃は、「おしっこ」「ウンチ」なんて、恥ずかしくて言えなくて、仕事上、必要なだけに困ったことでした。
 ところが今はどうでしょう。
 排尿障害の男性に普通に「おしっこの具合はどうですか」と顔色一つ変えずに言えてしまう。しかも、相手のお顔を見てサラッと言えてしまうのです。羞恥心をなくしてしまったことにちょっぴり感傷気味です。
 
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 ところで、皆さんはどんな薬剤師から薬をもらいたいですか。
 患者さんの身になれば、病院では緊張したなぁ、やれやれ、後は薬を貰って帰ろう。できるなら、早くさっさとしてくれるとありがたいだけど。
 そんなところが薬局です。
 私はある薬局で見たおばあちゃん薬剤師の存在が忘れられません。もうお年だからバタバタ動くわけではないのですが、その人がいるだけで店の中に緊張感がないのです。
 二十年くらい前に、堀美智子さんという薬剤師の星がおられました。
 彼女が「薬剤師は一生の経験が生きる仕事です」と教えて下さった事の意味をかみしめています。
 思春期、結婚、子育て、自立、ストレス、老いること、死と向き合うこと。すべてを通り抜けて初めて、その年齢の人と対等に、否、その人の気持ちが分かるようになります。
 勉強では取得できない共感の気持ちです。

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 いつの間にか、随分遠くまで来たことを感じます。
 望んで就いた仕事ではなかったのですが、ここまで来たということは、この道で修業することを仰せつかったのでしょう。
 ノミの心臓だった若い頃の自分。少しは成長したのかな。恥知らずのおばさんになっていたらどうしよう。
 去りがたい職場です。