こころあそびの記

日常に小さな感動を

お正月気分

 

 大晦日

 あれもこれもと、やり残したことやら今日しかできないことが山積みです。

 

 座敷に掃除機をかけていたら、子どもの頃にタイムスリップ。

 母に床の間のまわりを囲む黒い塗りの部分に、掃除機を当てないように何回も注意されたことを思い出しました。

 物を大切にする親の思いは、若い娘にわかるはずもなく、きっちりした性質の母の思い通りにできなかったのは、ひとえに、命じられた本人の心はそこにあらず、叱られたくない一心で手を動かしていたからです。今となっては申し訳なく思うばかりです。

 今や、掃除機の他にもいろいろな便利グッズが登場したおかげで、掃除はさま変わりした部分があるとはいえ、母から子へと受け継がれる掃除の仕方は各家々で違います。

 私は母に怯えて掃除をしていたわけですが、同じように厳しい躾をお父様から伝授されていたのが、幸田文さんです。

 お父上の幸田露伴さんに廊下の拭きかたから雑巾の絞り方まで、厳しく鍛えられた彼女のエッセイを読んだ時、我が友を得たりと思ったものです。

 道元様を持ち出すまでもなく、掃除は人間修行にちがいありませんのに、心がその修行から逃げ出していた私は掃除下手に育って今に至っております。

 

 

 さて、きれいになったお床には花を活けたくなる習性があります。

 もう、気の張る来客もないのですから要らないのに、お正月という気持ちがそうさせます。

 今年は倹約して松の入ったセット花を買ってきました。

 お軸も仰々しいのはやめて、美堂先生の桜の花の額を飾ったら、コンパクトなお床が仕上がって、気分はすっかりお正月になりました。

 

 

 門扉の松飾りが近くのお花屋さんでは手に入らなかったので、娘に頼んでおいたら、コーナンで売ってたよと買ってきてくれました。

 「一応、伊勢産と書いてあったよ」

 狂歌風にいえば、お伊勢の松のありがたさ歳神様の迷うことなし、というところでしょう。

 玄関まわりを整えたら、あとは台所仕事にとりかかります。

 ローストビーフを手始めに、紅白なますや、夜の年越しそばの準備もしなくてはなりません。

 忘れ物はなかったかしら。ボケ始めた頭ですから、そればかり気になるのです。元旦から営業しているお店も増えたのですから、心配には及ばないのに。

 昔の人は言いました。

 「正月早々ばたばたしてはいけない」と。

 松の内までお正月気分だった昔とは雲泥の差で、今は三が日が済めば人が動き出すご時世です。

 

 

「ピンポーン!」

 来てうれしい、帰ってなおうれしいお客様の来訪です。(笑)

 皆様、よいお年をお迎えくださいますよう念じています。