こころあそびの記

日常に小さな感動を

ちょっといい話

 

 散歩から帰ってきて玄関ドアを開けようとしたら、足下に大量の籾殻が落ちていました。

 あらあら、一昨日、28日に飾り付けたお正月のしめ縄飾りに付いていた稲穂を雀たちに食い散らかされたみたい。

 新年に来てくださる歳神様より早くのご来訪、ありがとうございます。

 「奥さん、人の寄りつかん家はあきませんで」とは、アリーナで出会ご老人の言葉。

 雀さんであっても、こんな路地奥の家を見つけてくれたことをうれしく思ったことでした。

 

 

 その“しめ縄飾り”は近くの花屋さんで求めたものです。

 その際、花屋のおじさんとお話ししました。

 「今年はお飾りの数少ないんじゃないですか?」

 「そうなんよ。入ってこんの。こんな手仕事をしていたのは年寄りでしょ。コロナでみんな止めてしもたんよ」

 コロナ禍は、そんなところにまで社会変革を起こしていたことに驚きました。

 「それに、今の若い人はリースが好きやから、マンションドアにペタッと貼り付けられるほうがいいらしいわ」

 そう聞くと納得。

 一緒に、お飾りや門松を目印に歳神様が来てくださるという言い伝えも忘れられていくのでしょうか。

 

 

 四方山話をしていると、下校してくる箕面自由学園の生徒さんたちが通りかかる時刻になりました。

 すると、いつものように「さようなら~」と、花屋の店主と生徒さん達の挨拶の交歓が始まりました。

 この挨拶は毎日毎日、もう30年も続いているそうです。

 いくら、道端に店があるとしてもなかなか見られない光景です。

 元気に「さようなら」と声をかける生徒も生徒ですが、店の仕事をしながら、その声に応じてきた店主もなかなかな方ではないでしょうか。

 

 「こないだ、コンサートに招待してもらったんや」

 「ええっ。芸術劇場の?」

 「そうや。市長さんの隣の席を用意してもらって緊張したわ」

 「でも、お店ありますのに・・」

 「そうやんか。うちが休みの水曜日にしてくれたんや」

 そうだったんですね。箕面自由学園ブラスバンドといえば、各種コンクールで毎年、上位入賞のクラブです。

 「来年はアメリカへ行くんやろ」

 「そうらしいですね。招待はされたものの、交通費が出なくて、クラウドファンディングしたとか聞いてますよ」

 「俺も、寄付させてもらったよ」

 「すごい!」

 30年間、生徒たちの行き帰りを見守った花屋さんと、陰ながらその様子を見守ってきた学園の先生方。

 神様が知ってくださるには、なんと長い時間が必要なのでしょう。でも、ちゃんとお天道様は見てござる。

 店主の「俺、感激したわ!」という言葉に、こちらも感激したことでした。

 

 

 また、彼はこうも言ってました。

 「生徒のみんなの人格が素晴らしいの」と。

 インド人の社会活動家、ニップンメータさんが、「次世代の人は見返りを求めない優しさを生まれながらに豊かに持っている。他者への親切で自分の喜びを感じることができる」とおっしゃっていたことを思い出しました。

 ”いまどきの若いもんは“のあとに続く言葉が、私たちが若い時とは明らかに変わってきています。

 自由学園ブラスバンドのコンサートで、「Tomorrow♪」を目の前で歌ってもらったことのある娘は、その感動をことあるごとに口にします。

 若人がやりたいことを全力で取り組むエネルギーは、周りの人々も巻き込む力を持っています。

 巻き込まれることによって、年長者も元気をもらえる。そんな心の好循環が、社会の基盤作りに役立ちそうです。

 元気で明るい世の中になりますように。