まさしく薄氷が張る朝でした。
立春過ぎの寒さを余寒といいます。この頃になると、春気分が心を急かし始めて、ややもすると春ファッションを先取りしたくなります。
しかし、ちょっと待って!
皮膚の防衛機能は徐々に春仕様に変更を始めたばかり。その防衛は、暖かい日に緩み、寒い日があれば、もと通り。行ったり来たりという不安定さです。
ですから、春の養生は、「衣替えはゆっくり」と明記されています。
その際、天気予報の服装チエックではなくて、あくまでも、自分の勘で決めてくださいませ。自分のセンサーを大切にすることが、健康につながります。
芯のところが紅色の白梅です。
さて、尼崎の長尾和宏先生が『病気の9割は歩くだけで治る!』というご本を書かれているようです。
今日も、店頭で腰痛を訴えておられる男性がおられました。
「どっか、いい整体院知らん?」
と、膝痛に悩んだ去年の私と同じこと考えておいででした。心の中で、それじゃ治らないよ。治すのは自分でなきゃ。と辛い見方をしていた私は薄情者です。
人間が二足歩行を決断して立ち上がったときから、腰痛はついて回ることになりました。
それを治すのは歩くこと。原点に戻ることです。事実、私も歩いて治しました。
しかし、歩けばいいんでしょ。とばかり万歩計を見て歩数を伸ばすことは、体に毒です。また、ハーハーと激しく歩くのもバツです。そんなことしたら、活性酸素があなたの体を蝕みます。
ゆっくり、心を満たす散歩を心がけましょう。
ところで、体の中のボイラーはどこにあるかご存知ですか。
それは、腎です。 冬に旺盛になる臓器は腎です。
体の上部から降りてきた水を、上にもどすためには、腎というボイラーの熱が必要です。この熱が不足する人は冷え性に悩まされるかもしれません。
春に向けて、疲れが泌尿器科や耳鼻科関係に出ることもあります。冷やさないように「きさらぎ」して、完全に暖かくなる日を待ちましょう。
おまけに。「いのちのろうそく」のお話はご存知でしょうか。
腎には、先天の精である親から受け継いだ精と、後天の精である水穀の精が蓄えられています。
ろうそくの燃焼を、生命の火にたとえますと、ろうそくの芯は先天の精。ろうは燃焼の環境です。
先天の精、つまり芯の長さは出生時に決まっています。それを、無駄に燃やさず、如何に大切に燃やし続けるか。それが、養生力です。
芯を最後まで残さず燃え尽きさせる。そんな人生でありたいものです。
過日の豊中でのお話会の反省すべき点が、今頃になって浮かんできたりしています。
最後に質問下さった男性は、「八味地黄丸はいつ飲めばいいのか?」とお尋ねでした。
基本的には、漢方は食前となっていますが、それは、厚生省が便宜上決めたもの。飲めるとき、思い出したときでもいいのですよ。
食前のタイミングは難しくて、結局、一日中、飲まずに終わったという話をよく耳にしますし、さらには、八味地黄丸を服用されている方からは、胃の重さを自覚することも聞いています。
それは、八味地黄丸に含まれる「地黄」が滋養薬ですから、ねっとりしています。ねっとりしているお餅や小芋は胃への負担があることは知られたことです。ですから、八味地黄丸なら、食後でもいいですよ、と申し上げたのです。
そうしたら、「漢方は食後でいいんやな!」と、吐き捨てられました。怒らせてしまったかもしれません。伝え方の難しさを思ったことです。
まだまだやな。
彼を思い出す度に、反省ばかりしています。