こころあそびの記

日常に小さな感動を

春寒

 

 彼岸の中日。

 夜来の雨や強風や雷が少しおさまった午前中にお墓参りを済ませて正解でした。

 その後、再び、春という名に相応しくない荒れたお天気に戻ってしまったからです。

 完全に冬に逆戻り。一昨日から続く西高東低の気圧配置がまだ消えないようです。

 さきほどのニュースでは、下関の沖で韓国籍のタンカーが転覆したと報じていました。

 この数年、春先の大きな海難事故がなかったように記憶してますから、久しぶりの大事故です。

 しかしながら、漁師さんたちは春の嵐は怖いことをご存知です。一説によると「春一番」という南風を命名したのも漁師さんだとか。

 時化る海に浮ぶなんて、よほどの男気がないと無理ではないかと、いやそうであっても怖いことでしょう。

 自然が牙をむく。海は一番厳しい場所だと思います。

 

 

 ところで、お気楽なことですが、BSトゥエルビで放送中の中国ドラマ『尚食』には、ご馳走がふんだんに出てきます。

 世界に向けて中華料理を宣伝するという国策でしょうから、それはそれは美味しそうに撮れています。

 一つ一つメモしておけばよろしいのですが、見とれておしまいというところが勉強嫌いの私です。

 それでも、全くの素人だった時にはスルーだった生薬も、少しは分かるようになったので、処方の意味を考えながら観られるようになりました。

 『尚食』は一般的な処方が多いので、誰でも楽しめると思います。

 たとえば、豚の串焼きに平素は山椒と塩を振るところ、今日の皇帝は元気がなさそうと見るや、酥油を塗って褒められるシーンがありました。

 酥油(そゆ)とは、ヤクの乳から作ったヤクバターのことです。

 ヤクという牛はヒマラヤ地方に住む牛で、そのミルクは牛乳の二倍の脂肪を含むそうです。

 そういえば、チベットでバター茶を作っているところをテレビで見たことがあります。

 これでもかというほどヤクバターと塩を入れるから、それはお茶ではないでしょうと画面に向かって言ってしまいました。

 寒いチベットでは、これを小さなカップで1日に60杯飲むそうです。そうやって、脂肪と塩から熱を産生して生きることが、彼の地の生活の知恵なのです。

 食べることは生きること。

 日本という土地で生まれたシンプルな料理が、体と精神を清浄に保ってきました。

 たまには中華料理もいいけれど、日々、飽きずに食べられるのはご飯とおつけものとお味噌汁。

 テレビ画面のご馳走をおかずに、ご飯をもりもり食べる幸せを満喫しています。