こころあそびの記

日常に小さな感動を

空の変幻

 

 天文薄明が始まったばかりの庭一面にうっすらと雪が撒かれていました。 

 雪だ!

 もうそれだけで夢見心地の朝でした。

  「雪ぐ」と書いて「すすぐ」と読みます。 雪は、吉兆でもあり、汚れを浄めるともいわれます。

 確かに、手入れを怠った庭であっても、雪を被れば別世界。すべてを清浄なベールで隠します。

 

 春の雪 昨日の記憶遠ざかる

            稲畑汀子

 

 

 立春が過ぎての雪は珍しいことです。

 もう何年も前、娘の結婚式は3月13日でした。あの日は好天の朝でしたのに、式の途中から猛烈な吹雪が始まって参列者を慌てさせたことを思い出します。

 その娘でさえ、今日3月21日の雪にびっくり。この分だと、あと一、二度は驚かされそうな気配です。

 今年の春は、いつまで足踏みするのでしょう。

 

 

 雪を見ただけで子ども心に戻って喜ぶのは私だけ。

 農家の方々は安定しないお天気に気が気でないかもしれません。

 特に、霜です。まだ遅霜とはいわないまでも、農作物には注意が必要です。

 活動を始めた根っ子が、冷たい水を吸い上げたらどうなるでしょう。植物は風邪をひいて、ひどい場合は枯れてしまいます。これは、根っ子がしっかりと閉塞して眠っている厳冬には起こらないことです。春になったという気の緩みから起こるのです。

 

 

 これは、人間にも云えることです。

 寒さ暑さも彼岸まで。と、気を許して薄着をしていませんか?

 冬の間はキュッと閉まっていた皮膚が緩んで寒邪を呼び込みやすいのが春先です。

 コロナ、インフルエンザ、はしかなど感染症が増えるのは春です。

 これは、皮膚の防衛だけではなく、免疫力が弱っていることにも関係があります。

 なぜ、この季節、免疫が弱るのか。

 それは、冬から春への移行期だからです。四季にはそれぞれ移行期がありますが、冬から春へというほど過激な変化はありません。

 春眠暁を覚えず、とも喩えられるのは、体がまだ覚めきっていないことを表しています。

 寒さが続きます。今しばらくは、冬の防寒を続けて過ごす方が良さそうです。