こころあそびの記

日常に小さな感動を

心育て

 

 ローズヒップが生りました。

 もっと枝においておく方がよいのかもしれないのですが、早く穫らないと株が傷むという人もあるので、思い切って今日切り取りました。

 この実でお茶を煎れようとか、種を採ろうとかは思っていません。

 ローズヒップという愛らしい名前の丸くて赤い実を側に置いておきたいだけなんです。

 勝手なおばはんのことを、バラはどう思っているでしょう。薔薇とお話しする『星の王子さま』の中の王子さま。

 遠く離れていても、あんなふうに自分の花を心配できる優しさを持つことが、花を育てる資格です。

 

 

 薄情者の私は植物というものに関心を持ったことがない学生でした。

 大学のときも、「生薬部」に属している人たちの活動に興味を持ったこともなければ、何が楽しくて山歩きしているんだろうと思っていたくらいです。

 

 人生には何度か転期があるもので、何かに触発されて結縁が成就します。

 私の場合、東洋医学と出会ったことが、それまでの狭い見方から脱出して世界を広げるきっかけになりました。

 はじめのうちは東洋医学の考え方に惹かれていたわけですが、そのうち、否が応でも漢方薬も学ばねばならなくなり、分け入れば、植物の持つ不思議な力を知ることになりました。

 

 

 生薬だけでなく食品として食べている動植物にも、共通の性味があります。

 それは、味でいえば、甘いは潤す。酸っぱいは収斂作用。苦いは気を下ろし、鹹味はボイラーに力を、辛い味は発散させるというものです。

 さらに、体を温めるものから冷やすものまであって、そのときの体調に合わせて、使うことができます。

 たとえば、今。寒さに向かう日々ですから、体を温めたい時期です。

 そんなときは、温める食品である生姜、シナモン、葛、棗、などを適当に献立に使えばよいことが分かります。

 驚く事なかれ。これらの食品は葛根湯の成分です。

 漢方薬の処方は料理の献立と同じなのです。

 

 これさえ知っておけば、薬膳という言葉に惑わされることなく、お台所で活用できるのではないでしょうか。

 

 

 閑話休題

 植物の形や効能を知ることから入門しましたが、そんなことはどうでもいいことで、ほんとうに到達したいところは、星の王子さまのように植物を愛せるかどうかです。

 水をやり風除けをして、花をいつも心配する彼のようにはまいりませんが、少なくとも、路傍の名もなき小さな花にも興味を持てるようになりました。

 うわぁかわいい。きれいな色。そう感じられる気持ちになれたことに喜びを感じています。

 それが今生の収穫であることを嬉しく思っています。