限りなき大地の呼べる春嵐
汀子
風雨の慟哭が強く弱く通り過ぎます。
あまりの激しさに夢うつつで起こされては、また、睡魔に引き戻されるという繰り返しの一晩でした。
それは、多分とうに過ぎた冬のせいではありません。少し早めの春と夏の綱引きであり、この時期特有の春嵐の夜でした。
床の中で、いつになったら止むのかなと雨雲レーダーを調べたら、日本列島全体を覆う雨雲がペタッと張り付いているではありませんか。しかも、抜けるのは今日の昼以降という予報を見た途端、あきらめて再び眠入ってしまったようです。
一夜明けても、外で聞こえる風雨の激しさは衰えることがありませんでしたから、雨戸を開けることに逡巡がありました。よもや、桜が丸裸になってはいないだろうかという想いがよぎったのです。
開けてびっくり。
ガッサガッサと大きく揺れたはずの枝なのに、必死にしがみついてたくさんの花々が残っていたのです。
よく頑張ってくれました。
満開になったのは、ほんの二、三日前ですから、お別れするには早すぎます。
そんなことから、朝一番に口をついて出たのは、井伏鱒二のあの詩でした。
コノサカヅキヲ受ケテオクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
元の漢詩は、武陵(唐代末の中国詩人)のものです。
大意=あなたにこの金の杯を勧めよう なみなみと注がれた酒を断ってくれるな 花が咲けば雨や風が多くなるように 人生は別れがつきものだ
細川護煕さんは、「日常の器の中から拾い上げ、見立てられ茶器の名品にでもたとえられようか」と、井伏鱒二の訳詩力を称えておられます。
因みに、鱒二というお名前は、井伏氏が魚釣りが好きだったからだそうで、名前の不思議がひとつ解けました。
四月の天気は、雨と日光がともに降り注ぐと表現され、心変わりの激しい恋人の喩えに用いられることもあるそうです。
最後ににナゾナゾを3つ。
①春が来たら、「すぐ」と言ってる間に食べたいおやつは何でしょう。
②「友風子雨(風を友とし雨を子とす)」それは何?
③「雲は私の母で、風が父、川が娘です(トルコのなぞなぞ)」
Ans.①プリン(スプリングの中三文字)、②雲、③雨
明日からの予報は、好天続きと出ています。ラッキー♡
桜花と悔いのないお別れをして、次のステージに進みましょう。