長らくお世話になった美容師さんが辞めてしまわれました。
これは、女性にとっては、ちょっとしたストレスになります。
次はどこの美容室に行こうかと、路頭に迷った子どものように不安な気持ちを抱えたまま、落ち着かない日々を送っていたわけですが、そうはいっても、髪は容赦なく伸びてきますし、白髪は日に日に目立つようになりました。
もう我慢できなくて、エイ!と近くの美容室に飛び込みました。
孫のように若い男性美容師さんが担当してくれて、自分のおばあちゃんに接するようにソフトな扱いを受けてまいりました。
彼には申し訳ないけれど、若いだけに腕はまだまだです。が、彼のおばあちゃんが八十歳を越えて、まだ、お元気であること。時々は、福山で一人住まいをしているおばあちゃんに会いに行ってあげると聞くと、世間の荒波に揉まれるには柔すぎるような彼の個性が、それはそれで長所のかもしれないと思いました。
老人になった鏡の中の自分の顔は、なるべくなら見たくありません。
そんなとき、彼の言葉を思い出すのです。
「僕のおばあちゃんは、ずっと働いていましたので、パーマは止めましたが、今でもカラーとカットはしています」
対抗するわけではありませんが、年寄りだからこそ身ぎれいにしなくてはならないと分かっています。これをサボる癖がついたら、鬱病や認知症へ一直線といわれることも知っています。
今日の私を喜ばせてくれたのは、来週おばあちゃん家に帰るという彼の「ずっとこのまま(の世の中)が続いて欲しい」という言葉でした。
故郷の姿が今以上に開発されることなど望んでいないという、まともな若者がいることがうれしかったのです。
日本が日本であり続けて、平和で人々がこの国に生まれたことに感謝を持ち続けられる世の中であって欲しいと、誰もが思っているはずです。
はて、さて、国民のこんな思いと同じ気持ちで政治の舞台に立てる人はどなたなのでしょう。
新聞やテレビ、今日まで世論をリードしてきたと思われるメディアが悉く国民を裏切ってきたことが白日のもとにさらけ出され、それを権力で誘導していた政治家の不祥事が後を絶ちません。
荘子の雑篇「盗跖篇」に、泥棒の話が出てきます。
「こそ泥は捕まるが、大泥棒は大名になる」というくだりは、まさに現在の政界の話そのものです。
荘子の昔から、政治の世界は裏金の通用するところだったとは。
国民一人一人の清廉なる心待ちで、なんとしても汚辱まみれの世の中を正常にもどしたい。一人でもそんな願いを持つ人が増えますように。