こころあそびの記

日常に小さな感動を

芍薬の花

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 最北の地、稚内でやっと桜が開いたそうです。南西諸島から始まった桜前線もようやくその任務を終えたようです。
 旧暦では、明後日から4月。夏が始まります。北の国ではこの日を待ちかねたように、一斉に花が咲き始めて大地にカラーが溢れます。”一斉に“というところが味噌ですね
 一斉にハイスピードで繰り広げられる絵巻物を見損なわないようするのはどんなに気の焦ることかと心配するのは大阪人の老婆心。何のことはない、一目で納めきることができる春が北に住む人の醍醐味ではないかと思い改めたりしています。関西の春などスローモーション過ぎて、かえって食傷されるかもしれませんね。
 このニュースを聞いて直ぐに思い出したのは、ターシャチューダーさんの庭です。写真集で一番美しいページはなんといってもこの季節です。
 ターシャさんご自身もこの季節が好きと書いておられたように記憶しています。
 そのターシャさんのお気に入りのお花に芍薬があります。この小さな蕾の中にどんなふうに折り畳めばこれだけの枚数の花びらが開いてくるのでしょう。その不思議さはバラと同じです。女性的な美しさの中にある男性的な雄々しい生命力を彼女も愛して止まなかったものと思われます。
 散歩で真っ白い芍薬を見つけました。
 「立てば芍薬」ですから、すくっと立つ姿が芍薬の特徴です。
 根っこは漢方薬に使われています。補陰してくれますから、女の人ばかりではなく、山登りの男性にも愛用者の多い生薬です。
 以前、島根県大根島から芍薬の苗を送ってもらったのに、何事にも丹精込めることの出来ない私は枯らしてしまった苦い経験があります。その大根島は、今や牡丹でも有名な島です。
 「座れば牡丹」。牡丹皮は重だるい血行の悪い人に使われます。でも、血を動かす薬ですから、妊婦さんは禁忌です。
 「歩く姿は百合の花」。百合根は昔から滋養があるといわれてきました。乾燥する秋に活躍する補陰薬です。
ちなみに、ゆらゆら揺れる姿は自律神経失調症にみられますから、美女の例えとしては、あまり良い表現ではではないように思うのですが・・
 美しい季節です。
 どうぞ見て下さいとばかりに声をかけてくる季節に応えているうちに、いつの間にか自分が元気になっているとは妙なる天人相応です。