朝、純白で開花した酔芙蓉は昼前に桃色に染まります。
やさしい色です。
時間よ止まれ、と思ってしまうお花です。
草を燃やすいい匂いが漂ってきました。
今はできなくなりましたが、子どもの頃は、庭の隅で雑草や落ち葉を燃やしたものです。
もうもうと立ち上る煙の匂い。
その頃は、なんとも思わず作業していましたのに、この年になると懐かしい匂いです。
先人がお香にして閉じ込めたくなった気持ちが分かります。
煙につられて畑の方に行ってみました。焚いおられた方に、いい匂いですね、と言ったら、ナスでも持って帰るか?ですって。
戦争中、播州に疎開経験があった母が、「田舎の人はええ人や」としばしば言ってました。
怖がりの母がこんなふうにに思えるようになったのは、田舎の人の言葉の優しさではないかと推察したりしています。
敬老の日のテレビで、100歳を超えて現役でお仕事されている女性薬剤師が報道されていました。
相談者の症状改善がなによりの生きがい。
患者さんにお手紙を認める手元がしっかりされていることに驚きました。
彼女のように元気で、他人のお役に立てることは、すべての高齢者の望むところです。
ところで、画面で彼女の背景に映っていたのは、漢方生薬でした。つまり、彼女は独りで漢方薬局を経営してこられたように拝察いたしました。
経営的に難しい漢方薬局。
しかし、敢えてその道を選ばれたから、現役でおられるのだと思います。
漢方薬局なら、病院のドクターとは違うアドバイスをして差し上げることができます。
そこが魅力ですが、患者にとっては代価が高額であることに、二の足を踏んでしまうのも現実です。
漢方薬局が高額なのは、健康保険が適用されないからであって、経営者が分捕りしてるわけではありません。
医療は厚生省と製薬会社と医師会が三方よしで作ったシステムです。
お医者さんも漢方処方してくれますよ。という宣伝は、その輪に巧みに入り込んだ製薬会社の薬のみであって、一般の生薬は保険の適応外です。
保険が利かず、しかも昨今、中国からの輸入も困難になり、ますます代価は上がらざるを得ません。
漢方薬局を閉めざるを得なくなる高齢薬剤師の話は枚挙に暇がありません。
戦後の教育は、西洋かぶれしすぎて、今、あらゆる分野に揺れ戻しが始まっています。
医療だってその一つです。
西洋医学が万能で、それまでの伝統医学がなおざりになっています。
でも、本当に患者さんに寄り添えるのは、「あなたの体はあなたのもの」ということに気づかせてくれる人ではないでしょうか。
それには、西洋、東洋の垣根を取っ払う医療であるべきではないかと思っています。
気軽に体のことを相談できる人がいると心強いものです。
それこそ、テレビに出演された高齢薬剤師のような人。
細々と奮闘している漢方薬局の経営が成り立つようにしてあげてほしいと、以前から思ってきました。
それには、薬剤師も勉強をもっともっと頑張らないといけないと思います。製薬会社の新薬の売り込みの片棒担ぎでは、ほんとうの薬剤師にはなれません。
そのお店に行くことを楽しみにしてもらえてこそ、ほんまもんになれるかもです。