こころあそびの記

日常に小さな感動を

失礼します

 

 秋の夕暮れは釣瓶落としです。

 雲一つない空は、夕焼けにはならずに見事なグラデーションを見せて、静かに暮れていきました。

 薄暮の空に見とれていたら、

 「ラブチャン!」と我が愛犬の名前を呼んで下さった方と行き合いました。

 夕空を背景にしたその方のお顔はよく見えず、お連れになっていた犬から隣人ではないかと察した次第です。

 

 

 これが、昼間であっても私はきっと、どなたでしたでしょうか、の世界だったと思います。

 そうなんです。何が苦手といって、人の顔を覚える機能が生来備わっていないのです。

 昔、店の採用面接にやってきた人が私を見るやいなや、「会ったことある」と言い出したことにびっくりしたことがあります。私には全く記憶がありませんでした。

 世の中には右脳が発達している人がおられるものだと感心したものです。

 

 商売を生業とする人だけでなく、人を相手にする仕事の鉄則は、名刺交換と同時に、名前とお顔を覚えるという技が不可欠といわれます。

 田中総理が、なぜ人のハートを鷲掴みにできたかというと、顔認証の特技にあったといわれています。

 私にその能力がないのは、「人の顔を見てはいけません」という育てられ方にあっただけでないことは、近頃、思うところです。

 

 

 顔とは別に、歌詞覚えも苦手だからです。

 だから、歌手という職業をこなせる人のことを尊敬の眼差しで見ています。ましてや、最近の若い人のように歌って踊るという離れ技は、私の範疇外のことです。

 

 

 マーティン・ハーケンズさんの『ユーレイズミーアップ』をユーチューブで見ていたら、彼の得意とする曲に『Rose』があることが分かりました。

 今も思い出したくない大失敗をやらかした曲です。

 当時、歌を習っていまして、発表会に出演することに。曲名は『Rose』です。

 この素敵な歌詞のイメージは英語でしか伝わらないものです。

 覚える段になって、遅々として進まなくなり、結果、舞台上でスポットライトが当たったときには頭が真っ白になってしまいました。

 

 顔が覚えられないこと。

 歌詞が覚えられないこと。

 ほんとに情けない婆さんです。

 

 町で、知らん振りして通り過ぎても本人には悪気はないのでお許し下さい。アタマがアホなだけですから。