これこれ、この青田が見たくて、JRで北上してみました。
梅雨明け前の豪雨が伝えられる中、山陽新幹線も止まっているというのに無謀なことです。
携帯アプリの”乗り換え案内“という便利な機能がお気楽なお出かけを手助けしてくれます。
しかし、それを駆使したところで、一日に何本かしか電車が停まらないような所へ行くのは、どうしても待ち時間ができてしまいます。
篠山口行きに乗って、武田尾、道場という大好きな景色を見てるうちに、お腹がすいてきました。
いやですね。年寄りのくせにお腹がすくなんて。これも電車に揺られることの利点?です。
年寄りの目的地に“どうしても”はありません。陶の郷に行くもよし。気が向かなかったら通り越して篠山口まで乗ってもいいんです。お気楽さはこの歳の特権です。
なんて思いつつ、携帯で相野駅前のお食事所を探したら、お肉屋さんが出てきました。
三田牛。なるほど。それもいいなぁ。
すっかりその気になって相野駅で降車。陶の郷行きのバスの発車まで一時間の待ち合わせ時間を利用して、お昼ご飯にお肉をいただきました。
なんと、幸せな。
言っときますけど、昔はこんな量では全然足りなかったんです。これで満足できるようになったのは、年齢のせい。年をとることは、ありがたいことです。
ところで、子どもたちがなりたい職業として、一時の流行りであったYouTuberは少し翳りを見せ始めたらしいです。
視聴者は飽き性ですから、見続けてもらうには、知恵が要ります。
私は時々、鉄道オタクの方のYouTubeを見ているのですが、その主催者である彼も収益は減少していると話していました。
しかし、「若者は荒野をめざす」です。あの手この手と考える柔軟さが逞しさを加味して成長していけるところが羨ましいことです。
私は彼の動画を見て、以前に行った場所を反芻するのを楽しみにしています。
去年、乗り継ぎだけを気にして乗った日豊本線。
予習しとけば良かったという思いとは裏腹に、自室で旅の復習ができるという楽しさを知ってしまいました。
そうだったよな。
そんな思いで二度美味しい旅行ができるだなんて幸せなことです。
さて、相野駅前からバスに乗り込んで、陶の郷に降り立ち、案内所で目に飛び込んできた色鮮やかなリーフレットにそそられて、「デミタスカップ」の展覧会に行くことを即決。
お隣の兵庫陶芸美術館へ移動です。
たっぷりと雨の匂いが染み込んだ山の空気を胸いっぱいに吸い込みながら歩きました。山々から霧が沸き上がって、立杭焼きの里に相応しい景色が満喫できました。
美術館の中は、外の無彩色とは対照的に、色彩に溢れた世界が広がっていました。
ヘレンドのターコイズブルー。
オーストリアの教会に入った途端、涙が自然に流れ出したと言った友人を、突然思い出しました。
記憶とは、縁に触れて突如として湧き出すもの。
彼女が久しぶりに立ち現れた、うれしい瞬間でした。