こころあそびの記

日常に小さな感動を

戸閉法要

 

 真夜中の豪雨と雷。怖かったですね。

 雷の爆音に怯えて布団にくるまっていた私の恐怖を倍増したのは、突然、パッと枕元のスタンドの電灯が点ったことです。なにもしてないのに!

 それも何度も何度も。その度に消すのですが、またすぐ点るんです。

 多分、雷が放電することによるものだろうと推測しましたが、真っ暗な中での異常な事態。生まれて初めての経験でしたから、気持ちのいいものではありませんでした。

 

 

 ところが一夜明けたら、昨晩の大荒れのお天気が嘘のように晴れ渡り、あの嵐になにか霊験あらたかな意味があったのかと思うほどでした。

 

 

 「神変大菩薩」としてまつられている役行者さんのお堂を、冬の間、閉める日です。

 行者堂拝殿に、大峰山や各地からやってきた修験者が集まって、お堂の鍵を閉める伝統儀式が執り行われました。

 古式ゆかしく、山伏どおしが問答します。「鍵は閉めたか」と。

 その昔、役行者箕面に滝を見つけて修行した地であることを、ここの住民として誇らしく思うようになったのは、いつからでしょう。 

 それを後世に伝えるべく、龍安寺さんが頑張って下さっていることはありがたいことです。

 お寺という直接的なツールはありませんが、参加することならできます。それが、ささやかなお手伝いになればと思っています。

 好天に恵まれて、外国人の観光客もちらほら見かけました。

 外国人が日本に期待するもの。

 それは、他国にはない静謐さであると聞きます。ここに住むものが、いつまでも受け継いでいきたいものの一つです。

 

 

 点火は正午頃でした。

 秋の太陽が写真の右斜め上にある時間帯でした。上の方の煙に光線が差しているのがわかるでしょうか。

 こんな発見に自ら気づけたことがうれしくて、まるで、神さまに褒めてもらったようにも思えて、それがまた嬉しくて、元気をもらえたことでした。

 

 

 山伏さんを取りまとめて導師をつとめられたのは、大本山聖護院門跡でした。

 舞い上がる護摩壇の煙の向こうに透けて見えるのがそのお方です。

 聖護院は、皇室ゆかりのお寺です。そこに役行者修験道

 ミスマッチのようですが、天皇行幸される時に御守りするのが、山を知り道を開く修験者だったのでしょうか。

 皇室、修験道、仏教、神さま。

 みんな仲良く助け合ってきたのがこの国です。

 役行者に届けとばかり高く立ち上る煙に、山伏さんの「今日は最高の護摩が焚けました」という声が溶けていきました。

 穏やかに滞りなく扉を閉めることができました。来春に開扉するまで、ゆっくりお休みください。