こころあそびの記

日常に小さな感動を

関西本線に乗ろう

 

 孫娘が母親と一緒に何やら忙しそうなことです。

 今日はバレンタインデー。

 この習慣が入ってきたのは1950年代らしいですが、定着したのはずっとあとでした。ですから、こんな作業もせずじまいに学生を終えられたことは幸運だったと思っています。もし、その頃、学生だったとしたら、きっとスネポンの一日であったことでしょう。

 

 2月は、すべての生物が息を吹き返す季節です。

 英語のことわざに「聖バレンタインの祭日には、すべての鳥は二羽ずつになって番う」とあるそうです。

 西洋の諺のみならず、東洋人の考えた七十二候にも、この季節には「鶏はじめて番う」とか「うぐいすさえずる」など、鳥の様子が出てきます。

 鳥の春を確認するためにも、散歩に双眼鏡が欠かせない季節になりました。

 因みに、七十二候の中で鳥に関する記述が多く見られるのは、大空を自由に飛ぶ鳥に霊力を感じたからとも云われます。

 科学一辺倒の現代だからこそ、そういう古代人の感覚をなぞって、自分の立ち位置を確認するのも良さそうです。

 

 

 

 さて、関西本線の旅のご報告です。

 関西本線名古屋駅からJR難波駅までの174.9kmを繋ぐ鉄道です。

 大阪から奈良までは電化されていますが、その先は非電化のため、ディーゼル車になります。

 加茂駅で乗り換える際、掲示板には亀山行きと出ているのに、いっこうに電車が入ってくる気配がありませんでした。

 おかしいな?と思って、ホームをキョロキョロしたらありました!はるか前の方に、たった二両の車体が見えたので慌てて滑り込んだことでした。

 なにしろ乗り遅れたら、次は一時間後になります。

 1日の乗車客が2000人未満の関西本線は、今も、廃線の危機にさらされている線路なのです。

 

 

 写真のように、二両連結のガチャガチャした車内は、こう見えて追加追加ですべてが完備されています。

 トイレもあるし、ICOCAの電子決済機も整理券も料金箱もついてます。沿線の殆どは無人駅ですから、乗降客のお世話は運転手さんがひとりで取り仕切るワンマンカーです。

 もちろん、ドアは開きません。

 「お降りの方は一番前の扉からお願いします」

 駅が近づくたびに、こんな車内放送が流れてちょっと旅行気分です。こんなタイプの電車は北海道でも見かけなかったくらいですから、ローカル線の旅がお好きな方にはおすすめの路線ではないでしょうか。

 

 

 二両連結の「キハ120型」ディーゼル車が、かろうじて車体が通れるほどの細い線路を走ります。たまにひらけるとそれは、平行して流れる木津川です。

 単線、ディーゼル車、無人駅。旅情たっぷりの関西本線は、ひま人だけに許される贅沢を満喫できる線路です。

 東海道新幹線東海道本線近鉄と大阪名古屋間の移動には、選択肢の多いことです。

 しかし、それは全て先人の残してくれた遺産です。

 関西本線だって、山を切り開き、鉄橋を架け、トンネルを通すという工事は、東海道本線となんら変わりはありません。

 子供服も大人の服も、手間は同じというやつです。

 ですから、できることなら、廃線を免れますようにと念じます。今は、密やかな運行のように見えますが、将来、必ず、役立つ日が来ると信じています。